大海(たいかい)に八の不思議あり。一には漸々(ぜんぜん)に転(うたた)深し、二には深くして底を得難(えがた)し、三には同じ一鹹(いっかん)の味なり、四には潮(うしお)限りを過ぎず、五には種々の宝蔵有り、六には大身の衆生 中に在(あ)って居住す、七には死屍(しし)を宿(とど)めず、八には万流(ばんる)大雨 之(これ)を収めて不増不減なり。
漸々に転深しとは、法華経は凡夫無解(むげ)より聖人(しょうにん)有解(うげ)に至るまで、皆 仏道を成(じょう)ずるに譬(たと)ふるなり。深くして底を得難しとは、法華経は唯仏与仏(ゆいぶつよぶつ)の境界(きょうがい)にして、等覚(とうがく)已下は極むることなきが故(ゆえ)なり。同じ一鹹の味とは、諸河に鹹(しお)なきは諸教に得道なきに譬ふ。諸河の水 大海に入(い)って鹹となるは、諸教の機類(きるい)法華経に入って仏道を成ずるに譬ふ。
(平成新編0263・御書全集1447・正宗聖典----・昭和新定[1]0412・昭和定本[1]0232)
[弘長01(1261)年(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]