白小袖(こそで)一領、銭一ゆ(結)ひ、又(また)富木殿の御文(おんふみ)のみ、なによりも、かき(柿)・なし(梨)・なま(生)ひじき・ひ(干)るひじき、やうやうの物う(受)け取り、しなじな(品々)御使ひに た(給)び候(そうら)ひぬ。
さては なに(何)よりも上の御いたはり(所労)なげ(歎)き入(い)って候(そうろう)。たと(設)ひ上は御信用なき様に候(そうら)へども、との(殿)其(そ)の内に をはして、其の御恩の かげ(蔭)にて法華経を やしな(養)ひ まい(進)らせ給(たま)ひ候へば、偏(ひとえ)に上の御祈りとぞなり候(そうろう)らん。大木の下の小木、大河の辺(ほとり)の草は正(まさ)しく其の雨に あ(当)たらず、其の水を え(得)ずといへども、露(つゆ)を つた(伝)へ、いき(気)をえ(得)て、さか(栄)うる事に候。此(これ)も か(是)くのごと(如)し。阿闍世王(あじゃせおう)は仏の御かたきなれども、其の内にありし耆婆大臣(ぎば だいじん)、仏に志ありて常に供養ありしかば、其の功(こう)大王に帰(き)すとこそ見へて候(そうら)へ。
(平成新編1170・御書全集1170・正宗聖典----・昭和新定[2]1728・昭和定本[2]1390~1391)
[建治03(1277)年09月11日(佐後)]
[真跡・身延曾存]
[※sasameyuki※]