詮(せん)を取って申(もう)さば、釈尊の五十余年の諸教の中に、先(さき)四十余年の説教は猶(なお)うたが(疑)はしく候(そうろう)ぞかし。仏 自(みずか)ら無量義経に「四十余年未顕真実(みけんしんじつ)」と申す経文、ま(目)のあ(当)たり説かせ給(たま)へる故(ゆえ)なり。法華経に於(おい)ては、仏 自ら一句の文字を「正直に方便を捨てゝ、但(ただ)無上道(むじょうどう)を説く」と定めさせ給ひぬ。其(そ)の上、多宝仏 大地より涌(わき)出(い)でさせ給ひて、「妙法華経皆是真実(かいぜしんじつ)」と証明(しょうみょう)を加へ、十方(じっぽう)の諸仏 皆 法華経の座に あつ(集)まりて、舌を出(い)だして法華経の文字は一字なりとも妄語(もうご)なるまじきよし助成(じょせい)を そ(添)へ給へり。譬(たと)へば大王と后(きさき)と長者等の一味同心に約束をなせるが如(ごと)し。
(平成新編0302・御書全集1200~1201・正宗聖典ーーーー・昭和新定[1]0471~0472・昭和定本[1]0288~0289)
[文永01(1264)年04月17日(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]