一 北方(ほっけ)の能化(のうけ)難(なん)じて云(い)はく、爾前(にぜん)の経をば未顕真実(みけんしんじつ)と捨て乍(なが)ら、安国論には爾前の経を引(ひ)き、文証(もんしょう)とする事自語相違(じごそうい)と。不審(ふしん)の事前々(さきざき)申(もう)せし如(ごと)し。総(そう)じて一代聖教(しょうぎょう)を大に分(わ)かって二と為(な)す。一には大綱(たいこう)、二には綱目(こうもく)なり。初めの大綱とは成仏得道(とくどう)の教(おしえ)なり。成仏の教とは法華経なり。次に綱目とは法華已前(いぜん)の諸経なり。彼(か)の諸経等は不成仏の教なり。成仏得道の文言(もんごん)、之(これ)を説くと雖(いえど)も但(ただ)名字(みょうじ)のみ有って其(そ)の実義(じつぎ)は法華に之(これ)有り。伝教大師の決権実論(けつごんじつろん)に云はく「権智(ごんち)の所作(しょさ)は唯(ただ)名のみ有って実義有ること無し」云云。
(平成新編0915・御書全集0972・正宗聖典----・昭和新定[2]1355・昭和定本[2]1120)
[建治01(1275)年11月23日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]