迦葉尊者(かしょうそんじゃ)と申せし人は、仏の御弟子の中には第一にたと(貴)き人なり。此(こ)の人の家をたづぬれば摩かだい(竭提)国の尼(に)くりだ(拘律陀)長者の子なり。宅にたゝみ(畳)千でう(畳)あり。一でうはあつ(厚)さ七尺、下品のたゝみは金(きん)千両なり。からすき(犂)九百九十九、一つのからすきは金千両。金三百四十石(こく)入(い)れたるくら(倉)六十。かゝる大長者なり。め(妻)は又(また)身は金色(こんじき)にして十六里(り)をて(照)らす。日本国の衣通姫(そとおりひめ)にもす(過)ぎ、漢土のりふじん(李夫人)にもこ(超)えたり。此の夫婦道心(どうしん)を発(お)こして仏の御弟子となれり。法華経にては光明如来(こうみょうにょらい)といはれさせ給(たま)ふ。此の二人の人々の過去をたづぬれば、麦飯(むぎはん)を辟支仏(びゃくしぶつ)に供養せしゆへ(故)に迦葉尊者と生(う)まる。金のぜに(銭)一枚を仏師にあつらへて毘婆尸仏(びばしぶつ)の像の御はく(箔)にひきし貧人は、此の人のめ(妻)となれり。
(平成新編1247・御書全集1550・正宗聖典----・昭和新定[2]1857・昭和定本[2]1533~1534)
[弘安01(1278)年07月08日(佐後)]
[古写本・日興筆 富士大石寺]
[※sasameyuki※]