さて此(こ)の経の題目は習(なら)ひ読む事な(無)くして大(だい)なる善根(ぜんこん)にて候(そうろう)。悪人も女人(にょにん)も畜生も地獄の衆生も十界ともに即身成仏と説かれて候(そうろう)は、水の底なる石に火のあるが如(ごと)く、百千万年くら(闇)き所にも灯(ともしび)を入(い)れぬればあか(明)くなる。世間のあだなるものすら尚(なお)加様(かよう)に不思議あり。何(いか)に況(いわ)んや仏法の妙(たえ)なる御法(みのり)の御力をや。我等衆生の悪業(あくごう)・煩悩(ぼんのう)・生死果縛(しょうじかばく)の身(み)が、正(しょう)・了(りょう)・縁(えん)の三仏性(ぶっしょう)の因によりて即ち法・報・応の三身(さんじん)と顕(あら)はれん事疑(うたが)ひなかるべし。「妙法の経力をもって即身に成仏す」と伝教大師も釈(しゃく)せられて候。心は法華経の力にては、くちなは(蛇)の竜女も即身成仏したりと申す事なり。御疑(おうたが)ひ候(そうろう)べからず。委(くは)しくは見参(げんざん)に入(い)り候(そうら)ひて申すべく候(そうろう)と申させ給(たま)へ。
(平成新編1244・御書全集1403・正宗聖典----・昭和新定[2]1852・昭和定本[2]1528~1529)
[弘安01(1278)年07月03日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]