『時光殿御返事(時光御返事)』(佐後)[古写本] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 今、日蓮は聖人(しょうにん)にはあら(非)ざれども、法華経に名をた(立)てり。国主ににく(憎)まれて我が身をせく上、弟子かよ(通行)う人をも、或(あるい)はの(罵)り、或はう(打)ち、或は所領(しょりょう)をと(取)り、或はところ(所)をお(追)ふ。かゝる国主の内(うち)にある人々なれば、たと(設)ひ心(こころ)ざしあるらん人々もと(訪)ふ事なし。此(こ)の事事(こと)ふりぬ。なか(中)にも今年は疫病(やくびょう)と申し、飢渇(けかち)と申し、と(訪)ひくる人々もすく(少)なし。たとひやまひ(病)なくとも飢(う)ゑて死なん事うたが(疑)ひな(無)かるべきに、麦の御とぶら(訪)ひ金(こがね)にもす(過)ぎ、珠(たま)にもこ(超)えたり。彼(か)のりだ(利■[=吸-及+(託-言)])がひえ(稗)は変(へん)じて金人となる。此(こ)の時光が麦、何ぞ変じて法華経の文字とな(成)らざらん。此の法華経の文字は釈迦仏となり給(たま)ひ、時光が故(こ)親父の左右の御羽(おんはね)となりて霊山浄土(りょうぜんじょうど)へと(飛)び給へ。かけり給へ。かへ(返)りて時光が身をおほ(覆)ひはぐく(育)み給へ。恐々謹言。
(平成新編1247~1248・御書全集1550・正宗聖典----・昭和新定[2]1857~1858・昭和定本[2]1534)
[弘安01(1278)年07月08日(佐後)]
[古写本・日興筆 富士大石寺]
[※sasameyuki※]