構(かま)へて構へて所領(しょりょう)を惜(お)しみ、妻子を顧(かえり)み、又(また)人を憑(たの)みてあやぶむ事(こと)無(な)かれ。但(ただ)偏(ひとえ)に思ひ切るべし。今年の世間を鏡とせよ。若干(そこばく)の人の死ぬるに、今まで生きて有(あ)りつるは此(こ)の事にあはん為(ため)なりけり。此(これ)こそ宇治川を渡(わた)せし所よ。是(これ)こそ勢多(せた)を渡せし所よ。名を揚(あぐ)るか名をくだ(下)すかなり。人身は受け難(がた)く法華経は信じ難しとは是(これ)なり。釈迦・多宝・十方の仏(ほとけ)来集して我が身に入(い)りかはり、我を助け給(たま)へと観念せさせ給ふべし。地頭(じとう)のもとに召(め)さるゝ事あらば、先(ま)づは此(こ)の趣(おもむき)を能(よ)く能く申(もう)さるべく候(そうろう)。恐々謹言。
(平成新編1165・御書全集1451・正宗聖典----・昭和新定[2]1721・昭和定本[2]1369~1370)
[建治03(1277)年08月04日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]