『新池殿御消息』(佐後) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 但(ただ)し日蓮が愚眼にてやあるらん。又(また)宿習(しゅくじゅう)にてや候らん。「法華経最第一」「已今当説難信難解(いこんとうせつなんしんなんげ)」「唯我一人能為救護(ゆいがいちにんのういくご)」と説かれて候文(もん)は如来の金言なり。敢(あ)へて私の言(ことば)にはあら(非)ず。当世(とうせい)の人は人師(にんし)の言を如来の金言と打ち思ひ、或(あるい)は法華経に肩を並べて斉(ひと)しと思ひ、或は勝(まさ)れたり、或は劣(おと)るなれども機にかな(適)へりと思へり。しかるに如来の聖教(しょうぎょう)に随他意・随自意と申す事あり。譬(たと)へば子の心に親の随(したが)ふをば随他意と申す。親の心に子の随ふをば随自意と申す。諸経は随他意なり、仏(ほとけ)一切衆生の心に随ひ給(たま)ふ故(ゆえ)に。法華経は随自意なり、一切衆生を仏の心に随へたり。諸経は仏説なれども、是(これ)を信ずれば衆生の心にて永(なが)く仏にな(成)らず。法華経は仏説なり、仏智なり。一字一点も深く信ずれば我が身即(すなわ)ち仏となる。譬へば白紙を墨に染むれば黒くなり、黒漆(うるし)に白き物を入(い)るれば白くなるが如し。毒薬変じて薬となり、衆生変じて仏となる、故に妙法と申す。
(平成新編1365・御書全集1437・正宗聖典----・昭和新定[3]1979~1980・昭和定本[2]1642)
[弘安02(1279)年05月02日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]