而(しか)るに専(もっぱ)ら正路に背(そむ)きて偏(ひとえ)に邪途(じゃと)を行(ぎょう)ず。然(しか)る間聖人(しょうにん)国を捨て善神瞋(いか)りを成(な)し、七難(しちなん)並び起こりて四海(しかい)閑(しず)かならず。方今(ほうこん)世(よ)悉(ことごと)く関東に帰(き)し、人皆(みな)土風(どふう)を貴(とうと)ぶ。就中(なかんずく)日蓮生(せい)を此(こ)の土(ど)に得たり。豈(あに)吾(わ)が国を思はざらんや。仍(よ)って立正安国論を造(つく)りて故(こ)最明寺(さいみょうじ)入道殿の御時(おんとき)、宿屋入道を以(もっ)て見参に入(い)れ畢(おわ)んぬ。而(しか)るに近年の間、多日の程、犬戎(けんじゅう)浪(なみ)を乱し、夷敵(いてき)国を伺(うかが)ふ。先年(せんねん)勘(かんが)へ申す所、近日普合(ふごう)せしむる者なり。彼(か)の太公(たいこう)が殷国(いんのくに)入(い)りしは西伯(せいはく)の礼に依(よ)る。張良(ちょうりょう)が秦朝(しんちょう)を量(はか)りしは漢王の誠(まこと)を感ずればなり。是(これ)皆(みな)時に当たりて賞を得たり。謀(はかりごと)を帷帳(いちょう)の中に回(めぐ)らし、勝つことを千里の外に決せし者なり。
(平成新編0476・御書全集0183・正宗聖典ーーーー・昭和新定[1]0715・昭和定本[1]0501)
[文永08(1271)09月12日(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]