帷(かたびら)一つ、墨(すみ)三長(ちょう)、筆(ふで)五管(かん)給(た)び候(そうら)ひ了(おわ)んぬ。観心(かんじん)の法門少々之(これ)を註(ちゅう)し、太田殿・教信御房(きょうしんごぼう)等に奉(たてまつ)る。此(こ)の事(こと)日蓮当身(とうしん)の大事なり。之(これ)を秘して無二の志を見ば之を開拓せらるべきか。此の書は難(なん)多く答(こた)へ少なし。未聞(みもん)の事なれば人の耳目(じもく)之を驚動(きょうどう)すべきか。設(たと)ひ他見(たけん)に及ぶとも、三人四人座を並べて之を読むこと勿(なか)れ。仏滅後二千二百二十余年、未(いま)だ此の書の心有らず、国難(こくなん)を顧(かえり)みず五五百歳を期して之を演説す。乞(こ)ひ願(ねが)はくば一見を歴(へ)来(き)たるの輩、師弟(してい)共に霊山浄土(りょうぜんじょうど)に詣(もう)でて、三仏(さんぶつ)の顔貌(げんみょう)を拝見(はいけん)したてまつらん。恐々謹言。
(平成新編0662・御書全集0255・正宗聖典ーーーー・昭和新定[2]0976・昭和定本[1]0721)
[文永10(1273)年04月26日(佐後)]
[真跡・中山法華経寺(100%現存)]
[※sasameyuki※]