『顕仏未来記』(佐後)[曾存・古写本] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 疑(うたが)って云(い)はく、如来の未来記(みらいき)汝(なんじ)に相(あい)当たれり、但(ただ)し五天竺並びに漢土等にも法華経の行者之(これ)有るか如何(いかん)。答(こた)へて云はく、四天下(してんげ)の中に全く二(ふたつ)の日無し、四海(しかい)の内(うち)豈(あに)両主(りょうしゅ)有らんや。疑って云はく、何を以(もっ)て汝(なんじ)之を知る。答へて云はく、月は西より出(い)でて東を照らし、日は東より出でて西を照らす。仏法も又(また)以て是(か)くの如(ごと)し。正像(しょうぞう)には西より東に向(む)かひ末法には東より西に往(い)く。妙楽大師の云はく「豈(あに)中国に法を失って之(これ)を四維(しい)に求むるに非(あら)ずや」等云云。天竺に仏法無き証文(しょうもん)なり。漢土に於(おい)て高宗皇帝(こうそうこうてい)の時、北狄東京(ほくてきとうけい)を領(りょう)して今に一百五十余年仏法王法共(とも)に尽き了(おわ)んぬ。漢土の大蔵(だいぞう)の中に小乗経は一向(いっこう)に之(これ)無く、大乗経は多分に之を失(しっ)す。日本より寂照(じゃくしょう)等少々之を渡す。然(しか)りと雖(いえど)も伝持(でんじ)の人(ひと)無ければ猶(なお)木石(ぼくせき)の衣鉢(えはつ)を帯持(たいじ)せるが如し。故(ゆえ)に遵式(じゅんしき)の云はく「始め西より伝(つた)ふ猶(なお)月の生(しょう)ずるがごとし。今(いま)復(また)東より返る猶(なお)日の昇るがごとし」等云云。此等(これら)の釈(しゃく)の如(ごと)くんば天竺・漢土に於て仏法を失せること勿論(もちろん)なり。問(と)うて云はく、月氏(がっし)・漢土に於て仏法無きことは之を知れり、東西北の三州に仏法無き事は何を以て之を知るや。答へて云はく、法華経の第八に云はく「如来の滅後(めつご)に於て閻浮提(えんぶだい)の内に広く流布(るふ)せしめて断絶(だんぜつ)せざらしめん」等云云。内の字は三州を嫌(きら)ふ文なり。
(平成新編0677~0678・御書全集0508・正宗聖典ーーーー・昭和新定[2]0997~0998・昭和定本[1]0741)
[文永10(1273)年閏05月11日(佐後)]
[真跡・身延曾存、古写本・日進筆 身延久遠寺]
[※sasameyuki※]