疑(うたが)って云(い)はく、何(なん)ぞ広略(こうりゃく)を捨(す)てゝ要(よう)を取るや。答(こた)へて曰(いわ)く、玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)は略を捨てゝ広を好(この)む、四十巻の大品経を六百巻と成(な)す。羅什三蔵(らじゅうさんぞう)は広を捨てゝ略を好む、千巻の大論を百巻と成せり。日蓮は広略を捨てゝ肝要を好む、所謂(いわゆる)上行菩薩所伝(しょでん)の妙法蓮華経の五字なり。九包淵(きゅうほうえん)が馬を相(そう)するの法は玄黄(げんこう)を略して駿逸(しゅんいつ)を取る。史陶林(しとうりん)の経を講(こう)ぜしは細科(さいか)を捨てゝ元意(がんい)を取る等云云。仏(ほとけ)既(すで)に宝塔に入(い)って二仏(にぶつ)座を並べ、分身(ふんじん)来集(らいしゅう)し地涌(じゆ)を召(め)し出(い)だし、肝要を取って末代(まつだい)に当(あ)て五字を授与(じゅよ)せんこと当世(とうせい)異義有るべからず。
(平成新編0736・御書全集0336・正宗聖典ーーーー・昭和新定[2]1074・昭和定本[1]0816)
[文永11(1274)年05月24日(佐後)]
[真跡・中山法華経寺(70%以上100%未満現存)、古写本・日興筆 富士大石寺 日目筆 富士大石寺 日澄筆 北山本門寺]
[※sasameyuki※]