有情(うじょう)輪廻(りんね)生死(しょうじ)六道と申して、我等(われら)が天竺(てんじく)に於(おい)て師子(しし)と生まれ、漢土(かんど)日本に於て虎狼野干(ころうやかん)と生まれ、天には■(=雕-隹+鳥)(くまたか)・鷲(わし)、地には鹿・蛇と生まれしこと数をし(知)らず。或(あるい)は鷹(たか)の前の雉(きじ)、猫の前の鼠(ねずみ)と生まれ、生きながら頭をつゝ(啄)き、しゝむら(肉叢)をか(咬)まれしこと数をしらず。是(か)くの如(ごと)く捨て置きし一劫が間の身の骨は、須弥山(しゅみせん)よりも高く、大地よりも厚(あつ)かるべし。惜(お)しき身なれども、云(い)ふに甲斐(かい)な(無)く奪(うば)はれてこそ候(そうら)ひしか。然(しか)らば今度(このたび)法華経の為(ため)に身を捨て命をも奪はれたらば、無量無数劫(むりょうむしゅこう)の間の思ひ出なるべしと思ひ切り給(たま)ふべし。穴賢(あなかしこ)穴賢、又々申すべし。恐々謹言。
(平成新編0953・御書全集1377・正宗聖典----・昭和新定[2]1434~1435・昭和定本[2]1143~1144)
[建治02(1276)年02月(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]