但(ただ)し皆人(みなひと)はにく(憎)み候(そうろう)に、すこ(少)しも御信用のありし上、此(ここ)までも御たづ(訪)ねの候は只(ただ)今生(こんじょう)計(ばか)りの御事(おんこと)には よも候はじ。定(さだ)んで過去のゆへ(故)か。御所労(ごしょろう)の大事にならせ給(たま)ひて候なる事あさましく候。但しつるぎ(剣)はかたき(敵)のため、薬は病(やまい)のため。阿闍世王(あじゃせおう)は父をころ(殺)し仏の敵(かたき)となれり。悪瘡(あくそう)身に出(い)でて後、仏に帰伏(きぶく)し法華経を持(たも)ちしかば、悪瘡も平癒(へいゆ)し寿(いのち)をも四十年の(延)べたりき。而(しか)も法華経は「閻浮提人(えんぶだいにん)・病之良薬(ひょうしろうやく)」とこそと(説)かれて候(そうら)へ。閻浮の内の人は病の身なり、法華経の薬あり、三事すでに相応しぬ、一身いか(争)でかたす(助)からざるべき。但し御疑(おうたが)ひの御(お)わたり候はんをば力及(およ)ばず。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
覚乗房(かくじょうぼう) はわき(伯耆)房に度々(たびたび)よ(読)ませてき(聞)こしめせ、きこしめせ。恐々(きょうきょう)。
(平成新編0891・御書全集1462~1463・正宗聖典ーーーー・昭和新定[2]1319・昭和定本[2]1091)
[建治01(1275)年07月12日(佐後)]
[真跡・富士大石寺外二ヵ所(40%以上70%未満現存)、古写本・日興筆 富士大石寺 日道筆 富士大石寺]
[※sasameyuki※]