『得受職人功徳法門抄』(佐後) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 問ふ、何が故(ゆえ)ぞ妙法の受職(じゅしょく)を受(う)くる人、是(か)くの如(ごと)く功徳を得るや。答ふ、此(こ)の妙法蓮華経は本地(ほんち)甚深(じんじん)の奥蔵(おうぞう)、一大事因縁の大白法なり。化導(けどう)三説に勝(すぐ)れ功(こう)一期(いちご)に高く、一切衆生をして現当の悉地成就をせしむる法なるが故に、此の経受職の人は是くの如く功徳を得るなり。釈(しゃく)に云(い)はく「法妙なるが故に人貴し」等云云。或(あるい)は云はく「好堅は地に処(しょ)して芽既(すで)に百囲、頻迦(びんが)は卵に在(あ)って声(こえ)衆鳥に勝(まさ)る」等云云。或は云はく、妙楽云はく「然(しか)も此の経の功(こう)高く理(り)絶するに約して、此の説を作(な)すを得(え)ん。余経(よきょう)は然(しか)らず」等云云。縦(たと)ひ爾前(にぜん)方便の極位(ごくい)の菩薩なりとも、今経(こんぎょう)の初心始行(しぎょう)の凡夫の功徳には及び給(たま)はず。何(いか)に況(いわ)んや、我等末法五濁(ごじょく)乱漫に生(せい)を受け、三類の強敵(ごうてき)を忍(しの)んで南無妙法蓮華経と唱(とな)ふ。豈(あに)如来の使(つか)ひに非(あら)ずや。豈(あに)霊山(りょうぜん)に於(おい)て親(まのあた)り仏勅(ぶっちょく)を受けたる行者に非ずや。是(これ)豈(あに)初随喜(しょずいき)等の類(たぐい)に非ずや。第五十の人すら尚(なお)方便の極位の菩薩の功徳に勝(まさ)れり。何に況んや、五十已前(いぜん)の諸人をや。是くの如く莫大(ばくだい)の功徳を今時(こんじ)に得受せんと欲(ほっ)せば、正直に方便たる念仏・真言・禅・律等の諸宗諸経を捨てゝ、但(ただ)南無妙法蓮華経と唱(とな)へ給へ。至心(ししん)に唱へたてまつ(奉)るべし、唱へたてまつるべし。

  文永九年壬申(みずのえさる)四月十五日の夜半(やはん)に之(これ)を記(しる)し畢(おわ)んぬ。
(平成新編0594~0595・御書全集----・正宗聖典ーーーー・昭和新定[1]0856~0857・昭和定本[1]0631~0632)
[文永09(1272)年04月15日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]