問うて云はく、法華経の第一方便品に云はく「諸法実相乃至(ないし)本末究竟等」云云。此(こ)の経文の意如何(いかん)。答へて云はく、下(しも)地獄より上(かみ)仏界までの十界の依正(えしょう)の当体、悉(ことごと)く一法ものこ(残)さず妙法蓮華経のすがた(相)なりと云ふ経文なり。依報あるならば必ず正報住すべし。釈に云はく「依報正報常に妙経を宣(の)ぶ」等云云。又云はく「実相は必ず諸法、諸法は必ず十如(じゅうにょ)、十如は必ず十界(じっかい)、十界は必ず身土」云云。又云はく「阿鼻(あび)の依正は全く極聖(ごくしょう)の自心に処し、毘盧(びる)の身土は凡下(ぼんげ)の一念を逾(こ)えず」云云。此等の釈義分明なり。誰か疑網(ぎもう)を生ぜんや。されば法界のすがた、妙法蓮華経の五字にかはる事なし。釈迦・多宝の二仏と云ふも、妙法等の五字より用の利益を施し給ふ時、事相に二仏と顕はれて宝塔の中にしてうなづき合ひ給ふ。
(平成新編0664・御書全集1358・正宗聖典----・昭和新定[2]0978~0979・昭和定本[1]0723~0724)
[文永10(1273)年05月17日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[秘・日蓮が相承の法門等]
[※sasameyuki※]