予粗(ほぼ)先(ま)づ此の子細を勘(かんが)ふるの間、身命(しんみょう)を捨棄(しゃき)し国恩を報ぜんとす。而(しか)るに愚人の習ひ遠きを尊び近きを蔑(あなず)るか、将又(はたまた)多人を信じて一人を捨つるかの故に終(つい)に空(むな)しく年月を送る。今幸(さいわ)ひに強仁上人(ごうにんしょうにん)御勘状を以て日蓮を暁喩(ぎょうゆ)す。然(しか)るべくんば此(こ)の次(つ)いでに天聴(てんちょう)を驚かし奉って決せん。誠に又御勘文(ごかんもん)の為体(ていたらく)非を以て先と為(な)す。若(も)し上人黙止して空しく一生を過ごさば、定めて師檀(しだん)共に泥梨(ないり)の大苦を招かん。一期(いちご)の大慢を以て永劫の迷因を殖(う)うること勿(なか)れ。速々(はやばや)天奏を経て疾(と)く疾く対面を遂げて邪見を翻(ひるがえ)し給へ。書は言を尽くさず、言は心を尽くさず。悉々(ことごとく)公場を期す。恐々謹言。
(平成新編0917・御書全集0185・正宗聖典----・昭和新定[2]1366・昭和定本[2]1123)
[建治01(1275)年12月26日(佐後)]
[真跡・京都妙顕寺(100%現存)]
[※sasameyuki※]