夫(それ)仏法を学せん法は必ず先(ま)づ時をならうべし。過去の大通智勝仏は出世し給ひて十小劫が間一経も説き給はず。経に云はく「一坐十小劫」と。又云はく「仏(ほとけ)時未(いま)だ至らずと知ろしめして請(こ)ひを受けて黙然(もくねん)として坐したまへり」等云云。今の教主釈尊は四十余年の程、法華経を説き給はず。経に云はく「説時(せつじ)未だ至らざるが故なり」云云。老子は母の胎(たい)に処して八十年、弥勒菩薩(みろくぼさつ)は兜率(とそつ)の内院に籠(こも)らせ給ひて五十六億七千万歳をまち給うべし。彼(か)の時鳥(ほととぎす)は春ををくり、鶏鳥(にわとり)は暁(あかつき)をま(待)つ。畜生すらなを(猶)かくのごとし。何(いか)に況(いわ)んや、仏法を修行せんに時を糾(ただ)さゞるべしや。
(平成新編0834・御書全集0256・正宗聖典0175・昭和新定[2]1228・昭和定本[2]1003)
[建治01(1275)年06月10日(佐後)]
[真跡・玉沢妙法華寺外四ヶ所 身延曾存(70%以上100%未満現存)]
[※sasameyuki※]