此の人は先世の宿業か、いかなる事ぞ臨終に南無妙法蓮華経と唱へさせ給ひける事は、一眼のかめ(亀)の浮木(ふもく)の穴に入り、天より下すいと(糸)の大地のはり(針)の穴に入るがごとし。あらふしぎあらふしぎ。又念仏は無間地獄に堕つると申す事をば、経文に分明なるをばし(知)らずして、皆人日蓮が口より出(い)でたりとおも(思)へり。文はまつげ(睫毛)のごとしと申すはこれなり。虚空の遠きと、まつげの近きと人みな(皆)み(見)る事なきなり。此の尼御前は日蓮が法門だにひが(僻)事に候はゞ、よも臨終には正念には住し候はじ。
(平成新編1218~1219・御書全集1546・正宗聖典ーーーー・昭和新定[2]1815~1816・昭和定本[2]1491~1492)
[弘安01(1278)年04月01日(佐後)]
[古写本・日興筆 富士大石寺]
[※sasameyuki※]