抑(そもそも)日蓮種々の大難の中には、竜の口(たつのくち)の頸(くび)の座と東条(とうじょう)の難にはすぎず。其の故は諸難の中には命をすつる程の大難はなきなり。或はの(罵)り、せ(責)め、或は処をおわれ、無実を云ひつけられ、或は面(おもて)をう(打)たれしなどは物のかずならず。されば色心の二法よりをこりてそし(誹)られたる者は、日本国の中には日蓮一人なり。ただし、ありとも法華経の故にはあらじ。さてもさてもわすれざる事は、せうぼう(少輔房)が法華経の第五の巻を取りて日蓮がつら(面)をうちし事は、三毒よりをこる処のちゃうちゃく(打擲)なり。
(平成新編1358・御書全集1555・正宗聖典ーーーー・昭和新定[3]1969~1970・昭和定本[2]1632~1633)
[弘安02(1279)年04月20日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]