『聖愚問答抄 下』(佐前) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 爰(ここ)に愚人意を竊(ひそ)かにし言を顕(あら)はにして云はく、誠に君を諫(いさ)め家を正しくする事先賢(せんけん)の教(おし)へ本文に明白なり。外典此(か)くの如し、内典是(これ)に違(たが)ふべからず。悪を見ていまし(誡)めず謗を知ってせ(責)めずば、経文に背(そむ)き祖師に違(い)せん。其の禁(いまし)め殊(こと)に重し。今より信心を至(いた)すべし。但し此の経を修行し奉らん事叶(かな)ひがたし。若し其の最要あらば証拠を聞かんと思ふ。聖人(しょうにん)示して云はく、今汝の道意を見るに鄭重慇懃(ていちょうおんごん)なり。所謂(いわゆる)諸仏の誠諦得道の最要は只是(ただこれ)妙法蓮華経の五字なり。檀王の宝位を退(しりぞ)き、竜女が蛇身を改めしも只(ただ)此の五字の致す所なり。夫(それ)以(おもんみ)れば今の経は受持の多少をば一偈一句と宣(の)べ、修行の時刻をば一念随喜と定めたり。凡(およ)そ八万法蔵の広きも一部八巻の多きも、只是(ただこれ)五字を説かんためなり。霊山の雲の上、鷲峰(じゅぶ)の霞(かすみ)の中に、釈尊要を結び地涌付嘱を得ることありしも法体は何事ぞ、只此の要法(ようぼう)に在り。天台・妙楽の六千張(ちょう)の疏(しょ)玉を連(つら)ぬるも、道邃(どうずい)・行満(ぎょうまん)の数軸の釈(しゃく)金(こがね)を並ぶるも、併(しかしなが)ら此の義趣を出(い)でず。誠に生死を恐れ涅槃を欣(ねが)ひ信心を運び渇仰を至(いた)さば、遷滅(せんめつ)無常は昨日の夢、菩提の覚悟は今日のうつゝなるべし。只南無妙法蓮華経とだにも唱へ奉らば滅せぬ罪や有るべき、来たらぬ福(さいわい)や有るべき。真実なり甚深なり、是(これ)を信受すべし。
(平成新編0405~0406・御書全集0497・正宗聖典----・昭和新定[1]0616~0617・昭和定本[1]0385~0386)
["文永05(1268)年""文永02(1265)年"(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]