『四条金吾殿御返事(煩悩即菩提書)』(佐後) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 経に云はく「諸仏智慧甚深無量(しょぶつちえじんじんむりょう)」云云。此の経文に諸仏とは十方三世の一切の諸仏、真言宗の大日如来、浄土宗の阿弥陀、乃至諸宗諸経の仏菩薩、過去未来現在の総諸仏、現在の釈迦如来等を諸仏と説き挙げて、次に智慧といへり。此の智慧とはなにものぞ、諸法実相十如果成の法体なり。其の法体とは又なにものぞ、南無妙法蓮華経是(これ)なり。釈に云はく「実相の深理本有(ほんぬ)の妙法蓮華経」と云へり。其の諸法実相と云ふも、釈迦多宝の二仏となら(習)うなり。諸法をば多宝に約し、実相をば釈迦に約す。是(これ)又境智の二法なり。多宝は境なり、釈迦は智なり。境智而二(にに)にしてしかも境智不二(ふに)の内証なり。此等はゆゝしき大事の法門なり。菩薩即菩提(ぼんのうそくぼだい)・生死即涅槃(しょうじそくねはん)と云ふもこれなり。まさしく男女交会のとき南無妙法蓮華経ととなふるところを、煩悩即菩提・生死即涅槃と云ふなり。生死の当体不生不滅とさとるより外(ほか)に生死即涅槃はなきなり。普賢(ふげん)経に云はく「煩悩を断ぜず五欲を離れず、諸根を浄(きよ)むることを得て諸罪を滅除(めつじょ)す」と。止観に云はく「無明塵労(じんろう)は即ち是(これ)菩提、生死は即ち涅槃なり」と。寿量品に云はく「毎(つね)に自ら是(こ)の念を作(な)す、何を以てか衆生をして無上道に入り、速(すみ)やかに仏身を成就することを得せしめん」と。方便品に云はく「世間の相常住なり」等は此の意なるべし。此(か)くの如く法体と云ふも全く余には非ず、たゞ南無妙法蓮華経の事なり。
(平成新編0597~0598・御書全集1116~1117・正宗聖典----・昭和新定[1]0860~0861・昭和定本[1]0635~0636)
[文永09(1272)年05月02日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]