雪のごとく白く候白米一斗、古酒(ふるざけ)のごとく候油一筒(ひとつつ)、御布施一貫文、態(わざ)と使者を以て盆料(ぼんりょう)送り給(た)び候。殊(こと)に御文(ふみ)の趣(おもむき)有り難くあはれに覚(おぼ)え候。
抑(そもそも)盂蘭盆(うらぼん)と申すは、源(もと)目連尊者の母青提女(しょうだいにょ)と申す人、慳貪(けんどん)の業によりて五百生餓鬼道(がきどう)にを(堕)ち給ひて候を、目連救ひしより事起こりて候。然(しか)りと雖(いえど)も仏にはな(成)さず。其の故は我が身いまだ法華経の行者ならざる故に母をも仏になす事なし。霊山八箇年の座席にして法華経を持(たも)ち、南無妙法蓮華経と唱へて多摩羅跋栴檀香仏(たまらばつせんだんこうぶつ)となり給ひ、此の時母も仏になり給ふ。
又施餓鬼(せがき)の事仰せ候。法華経の第三に云はく「飢ゑたる国より来たって、忽(たちま)ちに大王の膳(そなえ)に遇(あ)ふが如し」云云。此の文は中根(ちゅうこん)の四大声聞、醍醐の珍膳をおと(音)にもきかざりしが、今経に来たって始めて醍醐の味をあ(飽)くまでになめて、昔う(飢)えたる心を忽ちにやめし事を説き給ふ文なり。若(も)し爾(しか)らば餓鬼供養の時は此の文を誦(じゅ)して、南無妙法蓮華経と唱へてとぶ(弔)らひ給ふべく候。
(平成新編0469・御書全集1111・正宗聖典----・昭和新定[1]0707~0708・昭和定本[1]0493~0494)
[文永08(1271)年07月12日(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]