蹲鴟(いものかしら)・くしがき(串柿)・焼米・栗・たかんな(筍)・すづつ(酢筒)給び候ひ了(おわ)んぬ。月氏に阿育大王と申す王をはしき。一閻浮提(いちえんぶだい)四分の一をたなごころ(掌)ににぎり、竜王をしたがへて雨を心にまかせ、鬼神をめしつかひ給ひき。始めは悪王なりしかども、後には仏法に帰し、六万人の僧を日々に供養し、八万四千の石の塔をたて給ふ。此の大王の過去をたづぬれば、仏の在世に徳勝童子・無勝童子とて二人のをさな(幼)き人あり。土の餅を仏に供養し給ひて、一百年の内に大王と生まれたり。仏はいみじしといゑども、法華経にたい(対)しまいらせ候へば、蛍火と日月との勝劣、天と地との高下なり。仏を供養してかゝる功徳あり。いわうや法華経をや。土のもちゐ(餅)をまいらせてかゝる不思議あり。いわうやすゞ(種々)のくだ(果)物をや。かれはけかち(飢渇)ならず、いまはう(飢)へたる国なり。此をもってをも(思)ふに、釈迦仏・多宝仏・十羅刹女(じゅうらせつにょ)いかでかまぼ(守)らせ給はざるべき。
(平成新編1206・御書全集1544・正宗聖典ーーーー・昭和新定[2]1785~1786・昭和定本[2]1450~1451)
[建治04(1278)年02月25日(佐後)]
[古写本・日興筆 富士大石寺、日道筆 富士大石寺]
[※sasameyuki※]