問うて云はく、寿量品文底大事と云ふ秘法如何(いかん)。答へて云はく、唯密の正法なり。秘すべし秘すべし。一代応仏のいき(域)をひかえたる方は、理の上の法相なれば、一部共に理の一念三千、迹の上の本門寿量ぞと得意せしむる事を、脱益の文の上と申すなり。文底とは久遠実成の名字の妙法を余行にわたさず、直達正観・事行の一念三千の南無妙法蓮華経是(これ)なり。権実(ごんじつ)は理[今日の本迹の理]なり、本迹は事[久遠本迹の事]なり。又権実は智に約し教に約す[一代応仏の本迹]。本迹は[久遠の本迹]身に約し[名字の身]位に約す[名字即の位]。又雖脱在現具騰本種と云へり。釈尊久遠名字即の位の御身の修行を、末法今時の日蓮が名字即の身に移せり。「理は造作に非ざる故に天真と曰(い)ふ。証智円明の故に独朗と云ふ」の行儀、本門立行の血脈之を注す。秘すべし秘すべし。
又日文字の口伝、産湯(うぶゆ)の口決の二箇は両大師の玄旨にあつ。本尊七箇の口伝は、七面の決に之を表す。教化弘経の七箇の伝は弘通者の大要なり。又此の血脈並びに本尊の大事は日蓮嫡々座主伝法の書、塔中相承の稟承(ぼんじょう)唯授一人の血脈なり。相構へ相構へ、秘すべし伝ふべし。
法華本門宗血脈相承事
(平成新編1684・御書全集0877・正宗聖典0351・昭和新定[3]2697~2698・昭和定本[-]----)
[弘安05(1282)年10月11日(佐後)]
[古写本・日時筆 富士大石寺]
[秘・本門立行の血脈之を注す]
[※sasameyuki※]