『顕謗法抄』(佐前)[曾存] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 難じて云はく、華厳の五教、法相・三論の三時、禅宗の教外、浄土宗の難行(なんぎょう)・易行(いぎょう)、南三北七の五時等、門はこと(異)なりといへども入理一にして、皆(みな)仏意に叶(かな)ひ謗法とならずとい(言)はゞ、謗法といふ事あるべからざるか。謗法とは法に背(そむ)くという事なり。法に背くと申すは、小乗は小乗経に背き、大乗は大乗経に背く。法に背かばあに(豈)謗法とならざらん。謗法とならばなんぞ苦果をまねかざらん。此の道理にそむ(背)くこれひとつ。大般若(だいはんにゃ)経に云はく「般若を謗(ぼう)ずる者は十方の大阿鼻地獄(だいあびじごく)に堕(お)つべし」と。法華経に云はく「若(も)し人信ぜず乃至其の人命終(みょうじゅう)して阿鼻獄に入らん」と。涅槃(ねはん)経に云はく「世に難治(なんじ)の病(やまい)三あり。一には四重(しじゅう)、二には五逆(ごぎゃく)、三には謗大乗(ぼうだいじょう)なり」と。此等の経文あに(豈)むな(虚)しかるべき。此等は証文なり。されば無垢(むく)論師・大慢婆羅門(だいまんばらもん)・熈連禅師(きれんぜんじ)・嵩霊法師(すうりょうほっし)等は正法を謗じて、現身に大阿鼻地獄に堕ち、舌口中に爛(ただ)れたり。これは現証なり。天親菩薩(てんじんぼさつ)は小乗の論を作って諸大乗経をは(破)しき。後に無著菩薩(むじゃくぼさつ)に対して此の罪を懺悔(さんげ)せんがために舌を切らんとく(悔)い給ひき。謗法もし罪とならずんば、いかんが千部の論師懺悔をいたすべき。闡提(せんだい)とは天竺(てんじく)の語、此(ここ)には不信と翻(ほん)ず。不信とは、一切衆生悉有仏性(しつうぶっしょう)を信ぜざるは闡提の人と見へたり。不信とは謗法の者なり。恒河(ごうが)の七種の衆生の第一は一闡提謗法常没(いっせんだいほうぼうじょうもつ)の者なり。第二には五逆謗法常没等の者なり。あに謗法ををそ(恐)れざらん。
(平成新編0286~0287・御書全集0455・正宗聖典ーーーー・昭和新定[1]0447~0448・昭和定本[1]0265~0266)
[弘長02(1262)年(佐前)]
[真跡・身延曾存]
[※sasameyuki※]