御信用あつくをはするならば人のためにはあらず、我が故父(こちち)の御ため、人は我がをや(親)の後世にはかはるべからす。子なれば我こそ故をや(親)の後世をばとぶら(弔)ふべけれ。郷一郷知るならば、半郷は父のため、半郷は妻子眷属をやしなふべし。我が命は事出できたらば上(かみ)にまいらせ候べしと、ひとへにおもひきりて、何事につけても言(ことば)をやわらげて、法華経の信をうす(薄)くなさんずるやうをたばか(謀)る人出来せば、我が信心をこゝろ(試)むるかとおぼして、各々これを御けうくん(教訓)あるはうれしき事なり。たゞし、御身をけうくんせさせ給へ。上の御信用なき事はこれにもし(知)りて候を、上をも(以)ておど(脅)させ給ふこそをかしく候へ。参りてけうくん申さんとおもひ候ひつるに、うわて(上手)うたれまいらせて候。閻魔王に、我が身といとを(愛)しとおぼす御め(妻)と子とをひっぱられん時は、時光に手をやすらせ給ひ候はんずらんと、にくげ(憎気)にうちい(云)ひておはすべし。
(平成新編1123~1124・御書全集1539~1540・正宗聖典----・昭和新定[2]1661・昭和定本[2]1309~1310)
[建治03(1277)年05月15日(佐後)]
[真跡・大石寺外五ヶ所(10%以上40%未満現存)、古写本・日興筆 富士大石寺]
[※sasameyuki※]