御一門の御房たち又俗人等にもかゝるうれ(嬉)しき事候はず。かう申せば今生のよく(欲)とをぼすか。それも凡夫にて候へばさも候べき上、欲をもはな(離)れずして仏になり候ひける道の候ひけるぞ。普賢(ふげん)経に法華経の肝心を説きて候「煩悩を断ぜず五欲を離れず」等云云。天台大師の摩訶止観(まかしかん)に云はく「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)、生死即涅槃(しょうじそくねはん)」等云云。竜樹菩薩の大論に法華経の一代にすぐれていみじきやうを釈して云はく「譬(たと)へば大薬師の能(よ)く毒を変じて薬と為すが如し」等云云。「小薬師は薬を以て病を治す、大医は大毒をもって大重病を治す」等云云。
(平成新編1287~1288・御書全集1184・正宗聖典----・昭和新定[3]1928・昭和定本[2]1594~1595)
[弘安01(1278)年10月(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]