『神国王御書(真言亡国抄)』(佐後)[真跡(断片)] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 善無畏三蔵・金剛智三蔵・不空三蔵等の三三蔵は一切の真言師の申すは大日如来より五代六代の人々、即身成仏の根本なり等云云。日蓮勘(かんが)へて云はく、法偸(ほうぬす)みの元師なり、盗人の根本なり。此等の人々は月氏よりは大日経・金剛頂経・蘇悉地(そしっじ)経を齎(もたら)し来たる。此の経々は華厳・般若・涅槃経等に及ばざる上、法華経に対すれば七重の下劣なり。経文に見へて赫々(かくかく)たり明々たり。而るを漢土に来たりて天台大師の止観等の三十巻を見て、舌をふるい心をまどわして、此に及ばずば我が経弘通しがたし、勝れたりとい(言)はんとすれば妄語眼前なり、いかんがせんと案ぜし程に、一つの深き大妄語を案じ出だし給ふ。所謂(いわゆる)大日経の三十一品を法華経二十八品并(なら)びに無量義経に腹あ(合)わせに合はせて、三密の中の意密をば法華経に同(どう)じ、其の上に印と真言とを加へて、法華経は略なり、大日経は広なり。已(い)にも入れず、今(こん)にも入れず、当(とう)にもはづれぬ。法華経をかたうど(方人)として三説の難を脱れ、結句は印と真言とを用ひて法華経を打ち落として真言宗を立てゝ候。譬へば三女が后と成りて三王を喪(ほろぼ)せしがごとし。法華経の流通の涅槃経の第九に、我れ滅して後(のち)悪比丘等我が正法を滅すべし、譬へば女人のごとしと記し給へるは是なり。されば善無畏三蔵は閻魔王にせめられて、鉄の縄七脈(すじ)つけられて、から(辛)くして蘇(よみがえ)りたれども、又死する時は黒皮隠々として骨其れ露(あら)はると申して無間地獄の前相其の死骨に顕はし給ひぬ。人死して後色の黒きは地獄に堕つとは一代聖教に定むる所なり。金剛智・不空等も又此をも(以)て知んぬべし。此の人々は改悔は有りと見へて候へども、強盛の懺悔のなかりけるか。今の真言師は又あへて知る事なし。玄宗(げんそう)皇帝の御代の喪(うしな)ひし事も不審はれて候。
(平成新編1303・御書全集1523・正宗聖典1027・昭和新定[2]1382~1383・昭和定本[1]0888~0889)
[弘安01(1278)年"建治01(1275)年""文永12(1275)年02月"(佐後)]
[真跡・京都妙顕寺(70%以上100%未満現存)]
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