殊に生死一大事の血脈相承の御尋ね先代未聞の事なり貴(とうと)し貴し。此の文に委悉(いしつ)なり、能く能く心得させ給へ。只南無妙法蓮華経釈迦多宝上行菩薩血脈相承と修行し給へ。火は焼き照らすを以て行と為し、水は垢穢(くえ)を浄(きよ)むるを以て行と為し、風は塵埃(じんあい)を払ふを以て行と為し、又人畜草木の為に魂(たましい)となるを以て行と為し、大地は草木を生ずるを以て行と為し、天は潤(うるお)すを以て行と為す。妙法蓮華経の五字も又是くの如し、本化地涌の利益是なり。上行菩薩末法今の時此(こ)の法門を弘めんが為に御出現之有るべき由、経文には見え候へども如何が候やらん、上行菩薩出現すとやせん、出現せずとやせん。日蓮先づ粗(ほぼ)弘め候なり。相構(あいかま)へ相構へて強盛の大信力を致して、南無妙法蓮華経臨終正念と祈念し給へ。生死一大事の血脈此より外に全く求むることなかれ。煩悩即菩提・生死即涅槃とは是なり。信心の血脈なくんば法華経を持(たも)つとも無益なり。委細の旨(むね)又々申す可く候。恐々謹言。
(平成新編0514~0515・御書全集1338・正宗聖典1019・昭和新定[1]0745~0746・昭和定本[1]0524)
[文永09(1272)年02月11日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]