妙法蓮華経の五字の中に、諸論師・諸人師の釈まちまちに候へども、皆諸経の見(けん)を出でず。但し、竜樹菩薩の大論と申す論に「譬へば大薬師の能(よ)く毒を以て薬と為(な)すが如し」と申す釈こそ、此の一字を心へさせ給ひたりけるかと見へて候へ。毒と申すは苦集(くじゅう)の二諦、生死の因果は毒の中の毒にて候ぞかし。此の毒を生死即涅槃・煩悩即菩提となし候を、妙の極とは申しけるなり。良薬(ろうやく)と申すは毒の変じて薬となりけるを良薬とは申し候ひけり。
(平成新編1472・御書全集1006・正宗聖典1012・昭和新定[3]2110・昭和定本[2]1755)
[弘安03(1280)年07月02日"建治01(1275)年07月02日"(佐後)]
[真跡・中山法華経寺(100%現存)]
[※sasameyuki※]