『内房女房御返事』(佐後) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 内房(うつぶさ)よりの御消息に云はく、八月九日、父にてさふら(候)ひし人の百箇日に相当たりてさふら(候)ふ。御布施料に十貫まいらせ候、乃至あなかしこ、あなかしこ。
 御願文の状に云はく「読誦し奉る妙法蓮華経一部、読誦し奉る方便品寿量品三十巻、読誦し奉る自我偈三百巻、唱へ奉る妙法蓮華経の題目五万返」云云。同状に云はく「伏して惟(おもんみ)れば先考(せんこう)の幽霊生存の時、弟子遥かに千里の山河を陵(しの)ぎ、親(まのあた)り妙法の題名を受け、然る後三十日を経ずして永く一生の終はりを告ぐ」等云云。又云はく「嗚呼(ああ)閻浮の露庭に白骨仮に塵土(じんど)と成るとも、霊山の界上に亡魂定んで覚蕊(かくずい)を開かん」と。又云はく「弘安三年女弟子大中臣(おおなかとみ)氏敬白す」等云云。
 夫(それ)以(おもんみ)れば一乗妙法蓮華経は、月氏国(がっしこく)にては一由旬(ゆじゅん)の城に積み、日本国にては唯八巻なり。然るに現世後生を祈る人、或は八巻、或は一巻、或は方便・寿量、或は自我偈等を読誦し、讃歎(さんだん)して所願を遂げ給ふ先例之多し。此は且(しばら)く之を置く。唱へ奉る妙法蓮華経の題名五万返と云云。此の一段を宣べんと思ひて先例を尋ぬるに其の例少なし。或は一返二返唱へて利生を蒙る人粗(ほぼ)これ有るか。いまだ五万返の類を聞かず。但し一切の諸法に亘(わた)りて名字あり。其の名字皆其の体徳を顕はせし事なり。例せば石虎将軍(せっこしょうぐん)と申すは、石の虎を射徹(いとお)したりしかば石虎将軍と申す。的立(まとだて)の大臣(おとど)と申すは、鉄的(てってき)を射とをしたりしかば的立の大臣と名づく。是皆名に徳を顕はせば、今妙法蓮華経と申し候は一部八巻二十八品の功徳を五字の内に収め候。譬へば如意宝珠の玉に万(よろず)の宝を収めたるが如し。一塵(いちじん)に三千を尽くす法門是なり。
 南無と申す字は敬ふ心なり、随ふ心なり。故に阿難尊者は一切経の如是の二字の上に南無等云云。南岳大師云はく「南無妙法蓮華経」云云。天台大師云はく「稽首妙法蓮華経」云云。伝教大師云はく、稽首等云云。
(平成新編1489~1490・御書全集1420~1421・正宗聖典1012・昭和新定[3]2141~2142・昭和定本[2]1784~1785)
[弘安03(1280)年08月14日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]