其の後良(やや)有って、此の法華経の本門の肝心妙法蓮華経は、三世の諸仏の万行万善の功徳を集めて五字と為(せ)り。此の五字の内に豈(あに)万戒の功徳を納めざらんや。但し此の具足の妙戒は一度持って後、行者破らんとすれど破れず。是を金剛宝器戒(こんごうほうきかい)とや申しけんなんど立つべし。三世の諸仏は此の戒を持って、法身(ほっしん)・報身・応身なんど何(いず)れも無始無終の仏に成らせ給ふ。此を「諸教の中に於て之を秘して伝へず」とは天台大師書き給へり。今末法当世の有智・無智、在家・出家、上下万人此の妙法蓮華経を持って説の如く修行せんに、豈仏果を得ざらんや。さてこそ決定無有疑(けつじょうむうぎ)とは、滅後濁悪の法華経の行者を定判(じょうはん)せさせ給へり。三仏の定判に漏れたる権宗の人々は決定して無間なるべし。是くの如くいみじき戒なれば、爾前迹門の諸戒は今一分の功徳なし。功徳無からんに一日の斎戒も無用なり。
(平成新編1109~1110・御書全集1282~1283・正宗聖典1011~1012・昭和新定[2]1165・昭和定本[2]1488)
[建治03(1277)年03月21日"文永12(1275)03月21日""弘安01(1278)年03月21日"(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]