『撰時抄』(佐後)[真跡(断片)] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 漢土・日本に智慧すぐれ才能いみじき聖人は度々ありしかども、いまだ日蓮ほど法華経のかたうど(方人)して、国土に強敵(ごうてき)多くまう(儲)けたる者なきなり。まづ眼前の事をもって日蓮は閻浮第一の者としるべし。仏法日本にわた(渡)て七百余年、一切経は五千七千、宗は八宗十宗、智人は稲麻(とうま)のごとし。弘通は竹葦(ちくい)ににたり。しかれども仏には阿弥陀仏、諸仏の名号には弥陀の名号ほどひろまりてをはするは候はず。此の名号を弘通する人は、慧心は往生要集をつくる、日本国三分が一は一同の弥陀念仏者。永観(ようかん)は十因と往生講の式をつくる。扶桑(ふそう)三分が二分は一同の念仏者。法然はせんちゃく(選択)をつくる、本朝一同の念仏者。而かれば今の弥陀の名号を唱ふる人々は一人が弟子にはあらず。此の念仏と申すは双観(そうかん)経・観経・阿弥陀経の題名なり。権大乗経の題目の広宣流布するは、実大乗経の題目の流布せんずる序にあらずや。心あらん人は此をすい(推)しぬべし。権経流布せば実経流布すべし。権経の題目流布せば実経の題目又流布すべし。欽明より当帝(とうてい)にいたるまで七百余年、いまだきかず、いまだ見ず、南無妙法蓮華経と唱へよと他人をすゝめ、我と唱へたる智人なし。日出でぬれば星かくる。賢王来たれば愚王ほろぶ。実経流布せば権経のとゞまり、智人南無妙法蓮華経と唱えば愚人の比に随はんこと、影と身と声と響きとのごとくならん。日蓮は日本第一の法華経の行者なる事あえて疑ひなし。これをもってすい(推)せよ。漢土・月支にも一閻浮提の内にも肩をならぶる者は有るべからず。
(平成新編0863~0864・御書全集0283~0284・正宗聖典0213~0214、1002~1003・昭和新定[2]1274~1275・昭和定本[2]1047~1048)
[建治01(1275)年06月10日(佐後)]
[真跡・玉沢妙法華寺外四ヶ所 身延曾存(70%以上100%未満現存)]
[※sasameyuki※]