抑(そもそも)久しく申し承らず候の処に御文(ふみ)到来候ひ畢(おわ)んぬ。殊にあを(青)きうら(裏)の小袖一(ひとつ)、ぼうし(帽子)一、をび(帯)一すぢ、鵞目(がもく)一貫文、くり(栗)一籠(ひとこ)たしかにうけとりまいらせ候。
当今は末法の始めの五百年に当たりて候。かゝる時刻に上行菩薩御出現あって、南無妙法蓮華経の五字を日本国の一切衆生にさづ(授)け給ふべきよし経文分明(ふんみょう)なり。又流罪死罪に行なはるべきよし明らかなり。日蓮は上行菩薩の御使ひにも似たり、此の法門を弘むる故に。神力品に云はく「日月の光明の能(よ)く諸の幽冥(ゆうみょう)を除くが如く、斯の人世間に行じて能く衆生の闇を滅す」等云云。此の経文に斯人行世間(しにんぎょうせけん)の五(いつつ)の文字の中の人の文字をば誰とか思し食す、上行菩薩の再誕の人なるべしと覚えたり。経に云はく「我が滅度の後に於て応(まさ)に斯の経を受持すべし、是の人仏道に於て決定(けつじょう)して疑ひ有ること無けん」云云。貴辺も上行菩薩の化儀をたすくる人なるべし。
(平成新編1435・御書全集1102・正宗聖典1001・昭和新定[3]2061~2062・昭和定本[2]1719~1720)
[弘安02(1279)年12月03日(1277)年"(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]