『高橋入道殿御返事(加島書・西山書)』(佐後)[真跡・古写本] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 我等が慈父大覚世尊は、人寿百歳の時中天竺(ちゅうてんじく)に出現しましまして、一切衆生のために一代聖教(しょうぎょう)をとき給ふ。仏在世の一切衆生は過去の宿習有って仏に縁あつかりしかば、すでに得道成りぬ。我が滅後の衆生をばいかんがせんとなげき給ひしかば、八万聖教を文字となして、一代聖教の中に小乗経をば迦葉(かしょう)尊者にゆづり、大乗経並びに法華経・涅槃等をば文殊師利菩薩にゆづり給ふ。但し八万聖教の肝心・法華経の眼目たる妙法蓮華経の五字をば迦葉・阿難にもゆづり給はず、又文殊・普賢・観音・弥勒・地蔵・竜樹等の大菩薩にもさづ(授)け給はず。此等の大菩薩等ののぞ(望)み申せしかども仏ゆるし給はず。大地の底より上行菩薩と申せし老人を召しいだして、多宝仏・十方の諸仏の御前にして、釈迦如来七宝の塔中(たっちゅう)にして、妙法蓮華経の五字を上行菩薩にゆづり給ふ。
 其の故は我が滅後の一切衆生は皆我が子なり、いづれも平等に不便(ふびん)にをもうなり。しかれども医師(くすし)の習ひ、病に随ひて薬をさづくる事なれば、我が滅後五百年が間は迦葉・阿難等に小乗経の薬をもって一切衆生にあたへよ。次の五百年が間は文殊師利菩薩・弥勒菩薩・竜樹菩薩・天親(てんじん)菩薩等、華厳経・大日経・般若経等の薬を一切衆生にさづけよ。我が滅後一千年すぎて像法の時には薬王菩薩・観世音菩薩等、法華経の題目を除いて余の法門の薬を一切衆生にさづけよ。末法に入りなば迦葉・阿難等、文殊・弥勒菩薩等、薬王・観音等のゆづられしところの小乗経・大乗経並びに法華経は、文字はありとも衆生の病の薬とはなるべからず。所謂病は重し薬はあさし。其の時上行菩薩出現して妙法蓮華経の五字を一閻浮提の一切衆生にさづくべし。其の時一切衆生此の菩薩をかたき(敵)とせん。所謂さる(猿)のいぬ(犬)をみるがごとく、鬼神の人をあだ(怨)むがごとく、過去の不軽菩薩の一切衆生にの(罵)りあだ(怨)まれしのみならず、杖木瓦礫(じょうもくがりゃく)にせめられし、覚徳(かくとく)比丘が殺害に及ばれしがごとくなるべし。
(平成新編0886~0887・御書全集1458~1459・正宗聖典1001・昭和新定[2]1311~1313・昭和定本[2]1083~1085)
[建治01(1275)年07月12日(佐後)]
[真跡・富士大石寺外二ヵ所(40%以上70%未満現存)、古写本・日興筆 富士大石寺 日道筆 富士大石寺]
[※sasameyuki※]