『如説修行抄(隨身不離抄)』(佐後)[古写本] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 問うて云はく、如説修行の行者は現世安穏なるべし、何が故ぞ三類の強敵盛んなるや。答へて云はく、釈尊は法華経の御為に今度九横の大難に値ひ給ふ。過去の不軽菩薩は法華経の故に杖木瓦石を蒙り、竺の道生は蘇山に流され、法道三蔵は面(かお)に火印(かなやき)をあてられ、師子尊者は頭(こうべ)をはねられ、天台大師は南三北七にあだ(怨)まれ、伝教大師は六宗ににく(憎)まれ給へり。此等の仏・菩薩・大聖等は法華経の行者として而も大難にあ(値)ひ給へり。此等の人々を如説修行の人と云はずんば、いづくにか如説修行の人を尋ねん。然るに今の世は闘諍堅固・白法隠没なる上、悪国・悪王・悪臣・悪民のみ有りて正法を背きて邪法・邪師を崇重すれば、国土に悪鬼乱れ入りて三災七難盛んに起これり。かゝる時刻に日蓮仏勅を蒙りて此の土に生まれけるこそ時の不祥なれども、法王の宣旨(せんじ)背きがたければ経文に任せて権実二教のいくさを起こし、忍辱の鎧(よろい)を著て妙教の剣をひっさ(提)げ、一部八巻の肝心妙法五字のはた(幡)を指し上げて、未顕真実の弓をはり、正直捨権の箭(や)をは(矧)げて、大白牛車に打ち乗って権門をかっぱと破り、かしこ(彼処)へを(押)しか(掛)けこゝ(此処)へを(押)しよ(寄)せ、念仏・真言・禅・律等の八宗・十宗の敵人をせ(責)むるに、或はに(逃)げ、或はひ(引)きしりぞ(退)き、或は生け取りにせられし者は我が弟子となる。或はせめ返し、せめを(落)としすれども、敵(かたき)は多勢なり、法王の一人は無勢なり、今に至るまで軍やむ事なし。法華折伏破権門理の金言なれば、終に権教権門の輩を一人もなくせ(攻)めを(落)として法王の家人となし、天下万民諸乗一仏乗と成りて妙法独りはむ(繁)昌せん時、万民一同に南無妙法蓮華経と唱へ奉らば、吹く風枝をならさず、雨土くれをくだ(砕)かず、代はぎのう(義農)の世となりて、今生には不祥の災難を払ひて長生の術を得、人法共に不老不死の理(ことわり)顕はれん時を各々御らん(覧)ぜよ、現世安穏の証文疑ひ有るべからざる者なり。
(平成新編0670~0671・御書全集0501~0502・正宗聖典----・昭和新定[2]0988~0989・昭和定本[1]0732~0733)
[文永10(1273)年05月(佐後)]
[古写本・日尊筆 茨城猿島富久成寺]
[※sasameyuki※]