『経王御前御書』(佐後) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 種々(くさぐさ)御送り物給(た)び候ひ畢(おわ)んぬ。法華経第八妙荘厳王品(みょうしょうごんのうほん)と申すには、妙荘厳王と浄徳夫人と申す后(きさき)は浄蔵・浄眼と申す太子に導かれ給ふと説かれて候。経王御前を儲(もう)けさせ給ひて候へば、現世には跡をつぐべき孝子なり。後生には又導かれて仏にならせ給ふべし。今の代は濁世(じょくせ)と申して乱れて候世なり。其の上眼前に世の中乱れて見え候へば、皆(みな)人今生には弓箭(きゅうせん)の難に値って修羅道(しゅらどう)におち、後生には悪道疑ひなし。而(しか)るに法華経を信ずる人々こそ仏には成るべしと見え候へ。御覧ある様にかゝる事出来すべしと見えて候。故に昼夜に人に申し聞かせ候ひしを、用ひらるゝ事こそなくとも、科(とが)に行なはるゝ事は謂はれ無き事なれども、古(いにしえ)も今も人の損ぜんとては善(よ)き言(こと)を用ひぬ習ひなれば、終(つい)には用ひられず世の中亡びんとするなり。是偏(ひとえ)に法華経釈迦仏の御使ひを責むる故に、梵天・帝釈・日月・四天等の責めを蒙りて候なり。
 又世は亡び候とも、日本国は南無妙法蓮華経とは人ごとに唱へ候はんずるにて候ぞ。如何(いか)に申さじと思ふとも、毀(そし)らん人には弥(いよいよ)申し聞かすべし。命生きて御坐(おわ)さば御覧あるべし。又如何に唱ふとも日蓮に怨(あだ)をなせし人々は、先(ま)づ必ず無間地獄に堕ちて無量劫の後に日蓮の弟子と成って成仏すべし。恐々謹言。
(平成新編0635~0636・御書全集1123・正宗聖典----・昭和新定[1]0915~0916・昭和定本[1]0686~0687)
[文永09(1272)年(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]