抑(そもそも)此の経の一文一句を読み、一字一点を書く、尚出離生死証大菩提の因なり。然れば彼の字に結縁(けちえん)せし者、尚炎魔(えんま)の庁より帰され、六十四字を書きし人は其の父を天上へ送る。何に況んや阿鼻の依正は極聖の自心に処し、地獄・天宮皆是(これ)果地(かじ)の如来なり。毘慮(びる)の身土は凡下の一念を逾(こ)えず、遮那(しゃな)の覚体も衆生の迷妄を出でず。妙文は霊山浄土に増し、六万九千の露点は紫磨金(しまこん)の輝光を副(そ)へ給ふべし。殊に過去聖霊(しょうりょう)は御存生の時より御信心他に異なる御事なりしかば、今日講経(こうきょう)の功力(くりき)に依って仏前に生を受け、仏果菩提の勝因に登り給ふべし云云。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
(平成新編0347・御書全集0473・正宗聖典----・昭和新定[1]0526・昭和定本[1]0336)
[文永02(1265)年(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]