『祈祷抄』(佐後)[曾存] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 仏、法華経をとかせ給ひて年数二千二百余年なり。人間こそ寿(いのち)も短き故に、仏をも見奉り候人も侍(はべ)らね。天上は日数は永く寿も長ければ、併(しかしなが)ら仏をおがみ法華経を聴聞せる天人かぎり多くおはするなり。人間の五十年は四王天の一日一夜なり。此の一日一夜をはじめとして三十日は一月、十二月は一年にして五百歳なり。されば人間の二千二百余年は四王天の四十四日なり。されば日月並びに毘沙門天王は仏におくれたてまつりて四十四日、いまだ二月にたらず。帝釈・梵天なんどは仏におくれ奉りて一月一時にもすぎず。わづかの間にいかでか仏前の御誓ひ、並びに自身成仏の御経の恩をばわす(忘)れて、法華経の行者をば捨てさせ給ふべきなんど思ひつらぬればたのもしき事なり。
 されば法華経の行者の祈る祈りは、響きの音(こえ)に応ずるがごとし。影の体(かたち)にそえるがごとし。すめる水に月のうつ(映)るがごとし。方諸(ほうしょ)の水をまねくがごとし。磁石の鉄をすうがごとし。琥珀(こはく)の塵(ちり)をとるがごとし。あきらかなる鏡の物の色をうかぶるがごとし。
(平成新編0625~0626・御書全集1347・正宗聖典----・昭和新定[1]0898~0899・昭和定本[1]0672~0673)
[文永09(1272)年(佐後)]
[真跡・身延曾存]
[※sasameyuki※]