『聖愚問答抄 下』(佐前) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 聖人云はく、汝此の理を知りながら猶是の語をなす。理の通ぜざるか意の及ばざるか。我釈尊の遺法をまなび、仏法に肩を入れしより已来、知恩をもて最とし報恩をもて前とす。世に四恩あり、之を知るを人倫となづけ、知らざるを畜生とす。予父母の後世を助け、国家の恩徳を報ぜんと思ふが故に、身命を捨つる事敢(あ)へて他事にあらず、唯知恩を旨とする計りなり。先づ汝目をふさぎ心を静めて道理を思へ。我は善道を知りながら親と主との悪道にかゝらんを諫めざらんや。又愚人狂い酔ひて毒を服せんを我知りながら是をいましめざらんや。其の如く法門の道理を存じて火・血・刀の苦を知りながら、争(いか)でか恩を蒙る人の悪道にお(堕)ちん事を歎かざらんや。身をもなげ命をも捨つべし。諫めてもあきたらず歎きても限りなし。今生に眼を合はする苦しみ猶是を悲しむ。況んや悠々たる冥途の悲しみ豈痛まざらんや。恐れても恐るべきは後世、慎みても慎むべきは来世なり。而るを是非を論ぜず親の命に随ひ、邪正を簡(えら)ばず主の仰せに順(したが)はんと云ふ事、愚癡の前には忠孝に似たれども、賢人の意には不忠不孝是に過ぐべからず。
(平成新編0399~0400・御書全集0491~0492・正宗聖典----・昭和新定[1]0607~0608・昭和定本[1]0377~0378)
["文永05(1268)年""文永02(1265)年"(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]