而るに故阿仏聖霊は日本国北海の島のいびす(夷)のみ(身)なりしかども、後生ををそれて出家して後生を願ひしが、流人日蓮に値(あ)ひて法華経を持ち、去年の春仏になりぬ。尸陀(しだ)山の野干(やかん)は仏法に値ひて、生をいとい死を願ひて帝釈と生まれたり。阿仏上人は濁世(じょくせ)の身を厭(いと)ひて仏になり給ひぬ。其の子藤九郎守綱(とうくろうもりつな)は此の跡をつぎて一向法華経の行者となりて、去年は七月二日、父の舎利を頸(くび)に懸け、一千里の山海を経て甲州波木井身延山に登りて法華経の道場に此をおさめ、今年は又七月一日身延山に登りて慈父のはかを拝見す。子にすぎたる財なし、子にすぎたる財なし。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
(平成新編1478・御書全集1322・正宗聖典----・昭和新定[3]2120・昭和定本[2]1765)
[弘安03(1280)年07月02日(佐後)]
[真跡・佐渡妙宣寺(100%現存)]
[※sasameyuki※]