鵞目(がもく)一貫・しお一(ひと)たわら・蹲鴟(いものかしら)一俵・はじかみ(薑)少々、使者(つかい)をもて送り給(た)び了んぬ。
あつきには水を財(たから)とす。さむきには火を財とす。けかち(飢渇)には米を財とす。いくさ(軍)には兵杖を財とす。海には船を財とす。山には馬をたからとす。武蔵・下総には石を財とす。此の山中にはいゑのいも、海のしほを財とし候ぞ。竹の子・木の子等候へども、しほなければそのあぢ(味)わひつち(土)のごとし。又金(こがね)と申すもの国王も財とし、民も財とす。たとへば米のごとし。一切衆生のいのちなり。ぜに(銭)又かくのごとし。漢土(もろこし)に銅山と申す山あり。彼の山よりいでて候ぜに(銭)なれば、一文も千文もみな三千里の海をわたりて来たるものなり。万人皆たま(珠)とおもへり。此を法華経にまいらせさせ給ふ。
釈まなん(摩男)と申せし人のたな(掌)心には石変じて珠となる。金(こん)ぞく(粟)王は沙(いさご)を金(こがね)となせり。法華経は草木を仏となし給ふ。いわうや心あらん人をや。法華経は焼種(しょうしゅ)の二乗を仏となし給ふ。いわうや生種(しょうしゅ)の人をや。法華経は一闡提(いっせんだい)を仏となし給ふ。いわうや信ずるものをや。事々つくしがたく候。又々申すべし。恐々謹言。
(平成新編1379~1380・御書全集1559・正宗聖典----・昭和新定[3]2000・昭和定本[2]1653)
[弘安02(1279)年08月08日(佐後)]
[古写本・日興筆 富士大石寺]
[※sasameyuki※]