『持妙法華問答抄(持法華問答抄)』(佐前) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

惜しいかな、文武の卞和(べんか)があら玉、何(いず)くにか納めけん。嬉しいかな、釈尊出世の髻(もとどり)の中の明珠、今度我が身に得たる事よ。十方諸仏の証誠としているかせならず。さこそは「一切世間には怨多く信じ難し」と知りながら、争(いか)でか一分の疑心を残して、「決定無有疑」の仏にならざらんや。過去遠々の苦しみは、徒(いたずら)にのみこそう(受)けこ(来)しか。などか暫(しばら)く不変常住の妙因をうへざらん。未来永々の楽しみはかつがつ心を養ふとも、し(強)ゐてあながちに電光朝露の名利をば貪(むさぼ)るべからず。「三界は安きこと無し、猶火宅の如し」とは如来の教へ「所以に諸法は幻の如く化の如し」とは菩薩の詞(ことば)なり。寂光の都ならずば、何(いづ)くも皆苦なるべし。本覚の栖(すみか)を離れて何事か楽しみなるべき。願はくは「現世安穏後生善処」の妙法を持つのみこそ、只今生の名聞後世の弄引(ろういん)なるべけれ。須(すべから)く心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ、他をも勧めんのみこそ、今生人界の思出なるべき。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
(平成新編0300・御書全集0467~0468・正宗聖典1020~1021・昭和新定[1]0467・昭和定本[1]0284~0285)
[弘長03(1263)年(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]