『妙法尼御前御返事』(佐後)[真跡(断片)] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 一代の聖教いづれもいづれも、をろかなる事は候はず。皆我等が親父、大聖教主釈尊の金言なり。皆真実なり。皆実語なり。其の中にをいて又小乗・大乗、顕教・密教、権大乗・実大乗あいわかれて候。仏説と申すは二天・三仙・外道・道士の経々にたいし候へば、此等は妄語、仏説は実語にて候。此の実語の中に妄語あり、実語あり、綺語も悪口もあり。其の中に法華経は実語の中の実語なり。真実の中の真実なり。真言宗と華厳宗と三論と法相と倶舎・成実と律宗と念仏宗と禅宗等は実語の中の妄語より立て出だせる宗々なり。法華宗は此等の宗々にはに(似)るべくもなき実語なり。法華経の実語なるのみならず、一代妄語の経々すら法華経の大海に入りぬれば、法華経の御力にせめられて実語となり候。いわうや法華経の題目をや。白粉(おしろい)の力は漆を変じて雪のごとく白くなす。須弥山に近づく衆色は皆金色なり。法華経の名号を持つ人は、一生乃至過去遠々劫の黒業の漆変じて白業の大善となる。いわうや無始の善根皆変じて金色となり候なり。
 しかれば故聖霊、最後臨終に南無妙法蓮華経ととなへさせ給ひしかば、一生乃至無始の悪業変じて仏の種となり給ふ。煩悩即菩提、生死即涅槃、即身成仏と申す法門なり。かゝる人の縁の夫妻にならせ給へば、又女人成仏も疑ひなかるべし。若し此の事虚事(そらごと)ならば釈迦・多宝・十方分身の諸仏は妄語の人、大妄語の人、悪人なり。一切衆生をたぼらかして地獄におとす人なるべし。提婆達多は寂光浄土の主となり、教主釈尊は阿鼻大城のほのを(炎)にむせび給ふべし。日月は地に落ち、大地はくつがへり、河は逆しまに流れ、須弥山はくだけをつべし。日蓮が妄語にはあらず、十方三世の諸仏の妄語なり。いかでか其の義候べきとこそをぼ(覚)へ候へ。委しくは見参の時申すべく候。
(平成新編1483~1484・御書全集1405・正宗聖典----・昭和新定[2]1860~1862・昭和定本[2]1536~1537)
[弘安01(1278)年07月14日(佐後)]
[真跡・池上本門寺 千葉福正寺(70%以上100%未満現存)]
[※sasameyuki※]