『フリーダ』★★★
アスミック
フリーダ DTS特別版


-監督=ジュリー・テイモア
-出演=サルマ・ハエック、アルフレッド・モリーナ、ディエゴ・ルナ

メキシコの女流画家フリーダ・カーロ。交通事故で体に重い障害を持ち、残りの生涯をほとんど
ベッドの上で過ごすことになる。それでも絵を描き続け、著名な画家のディエゴ・リベラの妻と
なったその生涯を描いている。

残念…。凄く過大な期待をしてしまったのだ。メキシコの映画かと思ったら、外国で作られたメキ
シコ映画だった。
一番がっかりしたのは、会話がほとんど英語だったこと。これは大失敗だと思う。伝わり方、臨場
感が全然違う。人の集まる所や米国で英語は使っただろうが、ディエゴや友人達との会話で英語は
あり得ない。その時点でかなりトーンダウンしたのは事実。

ただ映像はかなり凝っていて楽しめた。フリーダの家は、実際の家(現在のフリーダ・カーロ美術
)を使ったのか、或いはセットなのか、忠実に再現されている。色彩も美しい。学校や遺跡が出
てくる所もなかなか面白かった。そして、フリーダの絵と実際の映像を重ね合わせる手法。これに
は驚かされた。確かに、サルマ・ハエックも絵の中のフリーダによく似ている。身につけた衣装も
メイクも、絵に描かれたフリーダや、写真の中のフリーダによく似せてつくられている。美しさに
はとにかく目を奪われる。フリーダの絵を通して、フリーダを描きたかったのかとも思ったが、それも不十分に思われる。

フリーダの生涯を一言で表すなら「情熱」だろうか。
自らのままならない肉体を抱えながらも、生き続ける力、その思いをキャンバスにぶつけるように
描く激しさ、ディエゴに対する愛情。溢れる情熱の行き場所を探しながら描き、同じく溢れる愛情
の行き場所を求めて愛した。自由を求めながら自由になれない肉体、愛を求めながら全幅の愛情を
得られない心。

その心の痛みが絵に表れている。フリーダの絵を見ていると、自分が血を流しているかのように痛
みや悲しみが伝わってくる。痛々しい傷の数々、流される血、そして涙。強い意志を示すかのよう
な太い眉毛も、着飾った衣装も、傷つき痛む心を隠そうとしているかのようだ。
おそらく、こんな短時間で彼女の生涯を語り尽くすのは無理だろう。
女性として、一人の人間として、驚嘆すべき人生を送った人物なのだから。

次にまたフリーダ・カーロの生涯が映画化されることがあったなら、その時はできれば、メキシコ
の監督で、全編スペイン語でお願いしたい(笑)


『サイダー・ハウス・ルール』★★★★
角川エンタテインメント
サイダーハウス・ルール DTS特別版

-監督=ラッセ・ハルストレム
-原作・脚本=ジョン・アーヴィング
-出演=トビー・マグワイア、シャーリーズ・セロン、マイケル・ケイン


望まない子供を産む母親と、産むことを拒む母親。その施術を行う米国の孤児院。そこで
孤児として育ったホーマー。やがて孤児院を出てリンゴ園で仕事を見つける。そこで出会
う人達と、体験する出来事を描く。

見返してもやっぱり良い映画だなぁと思う。
ジョン・アーヴィングの作品も好きだが、彼の作品にはあまり”普通”の人は出てこない。
何かしら障害を抱えていたりする。それが”普通”っていう事なんだと思えてくる。
孤児の子供達の姿がいじらしく切ない。子供をもらいに来る人達に気に入られたいと笑顔
をつくり、子供を思う母親の気持ちに思いを馳せ、いつかひきとられる事を心待ちにして
いる。そこには、自分を捨てた親に対する憎しみは見られない。そのように育てられたの
だろう。だが、全ての子供の願いが聞き届けられる訳ではないのだ。

ひきとられてもうまくいかず、孤児院で育ったホーマーは、ラーチ医師のやり方に異論を
持つ。思い立って孤児院を飛び出し、新しい世界を知る。海も知らず、リンゴをもぐのも
初めてだが、文字が読めた。医師としての心得もある。
自由な世界で知る、その世界でのルール。そして決断。大切なのは何なのか、それを考え
た上で、意志に反する決断をすることになる。ラーチ医師の行為も理解することになる。
シャーリーズ・セロンの寝姿が美しい。

ラーチ医師の言う「どんな人生でも 人の役に立て」という言葉が心に残る。
人は誰しも誰かから必要とされたいと願う。そして必要とされた時、それに応えたいと思
う。応えられる人でいられたらと。それが明日に向かう力となるのだろう。必要とされる
人となって孤児院に戻った ホーマーは本当に幸せだと思う。
人の真摯な想いを、もう一度最後まで信じてみたくなる映画。
…というか、今は信じたい気分です。信じさせてください(笑)


『バーバー吉野』★★
ハピネット・ピクチャーズ
バーバー吉野 スペシャル・エディション

-監督=荻上直子
-出演=もたいまさこ、米田良、浅野和之


その町では、子供達は皆同じ髪型をしていた…。
床屋が一軒しかない小さな町。町の小学生は伝統で「吉野ガリ」という同じ髪型をして
いた。そこへ東京から転校生がやって来る。「吉野ガリ」に疑問を持ち始める子供達と、
伝統を守ろうとする大人達の物語。

子供達がいい。
話としては、冗長でさほどドラマチックでもなく、映画館で見たら眠くなりそうな所も
ある。それでも嫌にならずに見られたのは、細かいエピソードや小物までが丁寧に作ら
れているからだろう。
サインポール※、ケケおじさん、ジャージ姿の先生、給食袋、好きな子の縦笛、夏祭り、
花火、カブト虫、”缶入り”柿の種、あいすまんじゅう…。

子供達と自然は、本当によく馴染む。桜や菜の花、木橋に川原。こんな自然の中で育つ
とこんな子供達になるのかもしれない、なんて思わせる。秘密基地や床屋の店先、放課
後に仲間と集まれる場所があるのも楽しい。

そして、床屋のおばちゃんもたいまさこ)。優しく、時に厳しく子供達を見守る。
おばちゃんだけでなく、子供達を見る周りの大人達の目も優しい。
流れるオペラハレルヤも心地よく、郷愁を誘うほのぼの映画でした。


サインポール(signpole) は、理容店の前でクルクルと回転する赤と白と青の細長い
 看板の名称。
『アワー・ミュージック』★★★★
(2004年・フランス、スイス)
アワー・ミュージック

監督=ジャン=リュック・ゴダール
出演=ナド・デュー、サラ・アドラー、ロニー・クラメール


4年ぶりのゴダール監督の新作。
本に関するイベントの為、サラエヴォに招かれたゴダール監督(本人)。そこに
残る戦禍の跡。イベントに出席した学生のオルガゴダールに、自らが編集した
DVDを渡し旅立つ。

ゴダールは新作が待ち遠しく、期待をさせてくれる監督の一人。やっぱり映画館に
足を運んでしまう。

作品は、3つの部分に分かれている。
第1部「地獄編」は、これでもかと言う程の戦争の映像が続く。目を覆いたくな
るものもある。が、事実として見ておかなくてはいけないと思う。過去の事でも他
人事でもなく、現実に今も起きている事なのだから。
死体や銃を撃つ人の顔を、愛する人に置き換えて考える程の想像力を持ちながら。

第2部「煉獄(浄罪界)編」では、サラエヴォでのゴダール、そしてオルガ。映像
と共に語られる詩と哲学、音楽。その言葉には多くの引用や暗示があって、私の頭
ではとても追いつけません(笑)それは後でパンフレットでも読むことにして…。
インディアンが現れて殺戮と略奪の歴史を語り、パレスチナイスラエルの問題に
触れる。勝者と敗者の論理。自らの「詩」を持たない者が敗者なのか?詩と哲学を
持たない日本人は、語ることができず敗者となるのか。言葉と映像から様々な問い
かけを投げかけられる。ゆっくり吟味する間もなく。

第3部「天国編」は、穏やかな世界。柔らかな光の中、エンディングを迎える。
第1部と全く違う世界がそこにある。オルガという女性の存在が、物語全体に生命感
を与えている。詩と映像中心の少し突き放した感じが緩和され、彩りを加えている。

ゴダールの映画は訳わからなかったり、話の筋がはっきりなかったりするが、それ
でも何かを与えてくれる。色んな解釈や受けとめ方があっていいと思う。投げかけ
られた物から、何を得るのか、何を作り出せるのか。そしてどんな音楽を奏でる事
ができるだろう。やっぱりもう一度ビデオで観たい(笑)

公式サイト=http://www.godard.jp/index.html

『たまゆらの女(ひと)』★★
(2003年・中国)
松竹
たまゆらの女

-監督=スン・チョウ
-出演=コン・リー、レオン・カーファイ


詩人を愛した絵付け師の女性と、彼女を愛した獣医師の男性とのラブストーリー。
『たまゆら(玉響)』とは、「しばしの間。ほんの少しの間」の意味で、 万葉集の「玉響
(たまかぎる) 昨日の夕見しものを…」の「玉響」を「たまゆらに」とよみ、玉の触れ合う
ようにかすかに、と解したところから生じた語。

コン・リーが美しい。が、『きれいなおかあさん』のイメージか、やや線の太さを感じる。
詩を送られて愛した詩人の「夢」と、彼女を愛し堅実な生活をする獣医師の「現実」との
間を長距離列車で行き来する彼女の姿は、まさに玉のように触れ動く。
離れていく詩人の心を感じていた彼女は、遠い地についていくことはできなかった。かと
いって、すぐ近くにいる獣医師の胸にすぐに飛び込むことも出来なかった。詩人は、彼女
を愛しながらも、彼女の強い愛を受け止めるだけの余裕がなかったのだ。

が、人生に与えられた時間は短い。失ってから本当に大切な物がわかるのか、失ったから
こそ大切だったと感じるのか。現実というのは、常に割り切れない。人の気持ちも説明が
つかないものだ。
短絡的な終わらせ方だが、過去と現在を結ぶ存在となる二役のコン・リーが悲しさを増す。

公式サイト=http://www.herald.co.jp/official/tamayura/index.shtml
『さよなら、さよならハリウッド』★★
(2002年・アメリカ)

日活
さよなら、さよならハリウッド

-監督=ウディ・アレン
-出演=ウディ・アレン、ティア・レオーニ、トリート・ウィリアムズ


過去の栄光が忘れられない映画監督。元妻の推薦で新作を撮る事になったが、撮影が始まる
と突然目が見えなくなってしまった。映画を完成させるまでを描いたコメディ。

ウディ・アレン監督・主演の作品。
何となくたまにウディ・アレンが見たくなって、つい新作を見に行ってしまう。あまり期待
していた訳でもなく、大爆笑という訳でもなく、いつもの神経症のウディ・アレンを見て、
安心(?)という感じでした。

それでも、随所に見える批判精神は健在で、映画界への批判、ハリウッドへの批判(確か
ンヌ映画祭のオープニング上映作品だったはず)が満載。わかりやすいドタバタ部分はアメ
リカ人受け、皮肉っぽいとこはヨーロッパ受けか。ハリウッドの映画製作現場や、プロ
デューサーとの関係がさらりと描けちゃうのも、彼ならでは。精神的障害の原因のひとつに
親子関係があるとして、関係改善に走る姿もよくある事。ウディ・アレンの父親ぶりは、
やっぱり笑える。
元妻のティア・レオーニは美しい。そして、今回は僅かしか見られなかったが、穏やかな秋
の陽射しに包まれたNYの眺めが美しい。

感動作でも大爆笑でもないのだけど、また次回作が見たくなってしまう。ウディ・アレン
クセになる。やっぱり好きなんだなぁ…。
『コーラス』</strong>★★★
(2004年・仏)

アミューズソフトエンタテインメント
コーラス コレクターズ・エディション


-監督=クリストフ・パラティエ
-出演=ジェラール・ジュニョ、ジャン・バティスト・モニエ


第二次大戦後のフランス。問題児の集まる寄宿舎に赴任した
音楽教師と生徒との歌を通じての心のつながりを描いた感動作。

主役の教師が『パティニョールおじさん』の監督・主演の俳優だと
わかった時点で、涙腺緩みました。フランスらしい味のある俳優。
更に子供が主役なら、それだけで十分。
叱られてつまらなそうな子供達が、夢中になって歌い始める時の生き
生きとした瞳とその表情。美しい歌声。それだけで感動!

子供達には良い本と音楽、体を動かすことという環境がどんなに大切か
それを与える大人達の責任を感じさせられる。
一人救われない子供が出てくる所もまた現実。
それでも私には少し出来過ぎな程の幸せな映画でした。
無条件に泣きたい時にどうぞ♪

蛇足ですが、フランソワ・ベルレアン(校長先生役)が出演してた映画
『さよなら子供たち』ルイ・マル監督、仏)は、同じく子供達が主役
ですが、すごくすごーくオススメしたい作品。
やっぱり泣けます(笑)

公式サイト=http://www.herald.co.jp/official/chorus/


『皇帝ペンギン』★★★★★
ジェネオン エンタテインメント
皇帝ペンギン プレミアム・エディション
(2005年・フランス)

-監督・脚本=リュック・ジャケ


南極大陸の大自然の中で生きるペンギンを撮ったドキュメンタリー。

86分…飽きるか眠くなるかも、なんて思っていたのは杞憂だった。
ペンギンの愛らしさだけじゃない、大自然と生き物の壮大な物語。
極寒のマイナス40度の世界では、寒さで凍え死ぬ事もある。卵を
離せばそのまま凍り付いてしまう。自然環境との闘いだけでなく
ペンギンを狙う外敵との闘いもある。常に危険と隣り合わせの自
然界の中で、生き続け、次に生を繋いでいく事の奇跡。

仲間の死も子供の死も、淡々と受け止めているように見える。が、
卵から孵り歩けるようになった我が子が冷たくなって動かない姿に、
何度も何度も嘴で確かめるようにつつき、子供を呼ぶかのように鳴
き声をあげる。我が子の死を嘆くかのように、死を信じられないか
のように。その姿が胸を打つ。

毎年繰り返される辛い「旅」、唯一の相手との出逢い、生命の誕生。
彼らの営みが、人間による環境破壊によって変えられてしまうこと
のないよう祈りたい。壮大な自然と生物は何て美しい。
いつまでも見ていたい、飽きることない光景だった。

公式サイト=http://www.gaga.ne.jp/emperor-penguin/index2.html

『ウィスキー』★★★
(2004年・ウルグアイ、アルゼンチン、ドイツ、スペイン)
アミューズソフトエンタテインメント
ウィスキー
-監督=フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
-出演=アンドレス・パソス、ミレージャ・パスクアル、ホルヘ・ボラーニ


久しぶりに弟が訪ねてくる事になり、従業員の女性に妻のフリをしてほしいと頼む工場の
経営者。仕事場以外で話す機会もない二人に、数年ぶりの弟が加わり、三人で過ごす数日
の休暇に起こる出来事。「ウィスキー」は写真を撮る時、微笑む表情をつくる言葉。

ハコボがずっと介護を続けてきた母が亡くなる。その墓を建てる為、兄弟は再会する事
になった。
ブラジルから訪れた弟は、冗談好きで話好き。仕事も精力的にこなし、妻と娘二人の家庭
を持つ。兄は対照的に、無愛想で無口。工場も仕事も広げるつもりもなく、何に対しても
興味を持たないように見える。マルタと二人でいても、仕事場同様会話もない。
部屋を片づけ、料理を用意し夫婦として振る舞うマルタは、弟の冗談に笑い、着飾り次第
に可愛くなっていく。

それぞれの生活を生きてきた三人が、ほんの数日間、触れ合う事で何かが変わっていく。
それは心の中の小さな変化かもしれないし、人生を変える大きな変化かもしれない。が、
三人の心に確実に変化をもたらした。些細な出来事、人との出逢い。気持ちひとつで人は
変わり得るのだ。マルタの笑顔がこの先も続くように、ハコボが笑顔を思い出せるように。
その為の変化であってほしいと願う。幸せな笑顔の為にできる事は、ごくごく僅かな事だっ
たりするのだから。

『ライフ・アクアティック』★★
(2004年・アメリカ)
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
ライフ・アクアティック

-監督=ウェス・アンダーソン
-出演=ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット


久しくヒット作のない海洋ドキュメンタリー監督が、仲間を殺した”ジャガーサメ”を
討ちに仲間と息子(?)と共に航海に出かける。

期待しすぎてしまった。前作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』は面白かった。今回も独特
のユーモアセンスが満載。出演者も豪華で、ビル・マーレイアンジェリカ・ヒューストン
も味がある。船のつくりも凝ってるし、魚のCGもよくできている。オリジナルユニフォーム
に靴まで作っちゃうトコも前作同様のこだわりを感じる。お金かかってるなぁ、と見ながら
感心した。

おそらく監督のこだわりを表現するのに時間は2時間は短すぎた。詰め込みすぎて散漫な印
象が残り、ストーリーがわかりにくくなってしまった。細かいエピソードも中途半端。
勿体ないなぁ。次回作に期待したい。


公式サイト=http://www.movies.co.jp/lifeaquatic/