『コーヒー&シガレッツ』★★★★
(2003年・アメリカ)

角川エンタテインメント
コーヒー & シガレッツ (初回限定生産スペシャル・パッケージ版)

-監督=ジム・ジャームッシュ
-出演=トム・ウェイツ、イギー・ポップ、ビル・マーレイ


カフェを舞台に、コーヒーを飲みながら煙草を吸いながら会話するシーンを綴った11作。

ジム・ジャームッシュ監督の空気感を味わう作品。出演者はみなクセのある人達で味が
ある。ストーリーはあるようなないようなものなので、一緒にお茶しながら一服しなが
ら雰囲気を楽しむといった感じ。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で使われた間
合いや『ダウン・バイ・ロー』のユーモアを思い起こさせる。音楽とモノクロの映像、
台詞の「間」、にやっと笑えるユーモアのセンスがいい。好みも分かれるかもしれない
が私は好き♪BGM代わりに流して眺めていたい。

『ライフ・アクアティック』は失敗だったが、ビル・マーレイは笑える。


公式サイト=http://coffee-c.com/
『海を飛ぶ夢 』★★★

(2004年・ スペイン )



ポニーキャニオン

海を飛ぶ夢


監督= アレハンドロ・アメナーバル
出演=ハビエル・バルデム、 ベレン・ルエダ


海での事故により若くして四肢麻痺の障害を持った主人公が、 尊厳死 を求める訴えを起こす。
訴えが認められなかった末選ぶ結末。

「安楽死 」ではない「 尊厳死 」を扱った映画。
首から下の身体機能を失ったまま、ほとんどベッドの上で過ごした彼の28年を想像するのは
難しい。他人の助けなしには何も為し得ず、プライバシーが一切無い生活。何気ない言葉や
当たり前に行う行為が 無意識 に彼を傷つける。他人との距離は自分から近づく事ができない
以上、無限大に等しい。そんな生活は彼にとって、透明な壁に囲まれた 刑務所 の様なもの
だったのかもしれない。

「安楽死 」を扱ったカナダの映画に『みなさん、さようなら』という作品がある。この映画
では主人公の老人は、大勢の友達に囲まれたまま明るく最期の時を迎える。だがやはり死に
向かう為の準備は悲しく、人の死は辛い。わかっているつもりでも、簡単に受け入れられる
ものではない。

ラモンの選択は26年の歳月を要し、実行に至るのに更に2年要した。
最後まで「何故自分は死を選ぶのか」と自らに問いかけつつ決めた結末は、彼にとっては正
しいものだったのかもしれない。ただ正しかったとしても、それでも死という現実は重く悲
しい。
そしてこれが事実基づいた話だという現実も重く胸に残る。

公式サイト= http://umi.eigafan.com/
『ミリオンダラー・ベイビー』★★★★
(2004年・アメリカ)

ポニーキャニオン
ミリオンダラー・ベイビー

-監督=クリント・イーストウッド
-出演=クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン


ボクシング・ジムを経営する初老のトレーナーと、30代を迎えたボクサーを志すウェイトレスの
女性との物語。

かなり泣いてしまった(笑)すぐに映画館を出るのが恥ずかしいくらいに。前評判が高かったの
で過大な期待はしないでおいた。ボクシングは好きなので興味は持ったが、「ロッキー」の様な
よくあるサクセス・ストーリーを描いていた。が、部分的にはともかく、予想と全く違っていた。

まず、クリント・イーストウッド演じるトレーナーのフランキーと、ボクサーを目指すマギー
精神的な深い繋がり。
マギーは何故30を過ぎてから、それ程までにボクサーを目指そうとするのか?それは離れて住む
家族の為だった。だが、お金を貯めて訪ねた母は、迷惑そうにマギーの事を近所の笑い者だと罵
る。闘う目的を見失いそうになるマギーには、それでもフランキーがいてくれた。同じように、
フランキーにとってもマギーは大切な存在になっていたのだ。
THE BACK HORN の歌『扉』の「♪誰のために生きているのだろう、僕一人じゃ満たされぬ思い」
という歌詞を思い出した。満たされぬ思いを抱えた者が、互いの為と思える相手に出会う事がで
きたのだ。

ヒラリー・スワンクの鍛え方もスゴイ!トレーニングで引き締まり、体の切れが良くなり、パン
チスピードが増す。目がボクサーの目つきになっていく。試合も迫力だ。

ボクサーの寿命は短い。負けた後の肉体的・精神的ダメージも大きいが、辞めた後の人生の方が
遥かに長い。その時、マギーの選ぶ選択は、あまりに辛い。だが、マギーにはずっとフランキー
がいてくれた。全てを任せ信頼できる相手に出会えたマギーは、本当に幸せだったと心から思え
る。人生の長さやお金、名誉といった物差しで測ったら不幸かもしれないが、彼女が幸せだった
のは確かだ。

クリント・イーストウッドモーガン・フリーマンの静かで雄弁な演技、ヒラリー・スワンク
ひたむきさ、抑制された脚本。アカデミー賞4部門受賞は納得できる作品だった。一見の価値は
十分にあります☆

公式サイト=http://www.md-baby.jp/


『理想の女(ひと)』★★★
(2004年・スペイン・伊・英・ルクセンブルク・米)


-監督=マイク・パーカー
-出演=スカーレット・ヨハンソン、ヘレン・ハント、トム・ウィルキンソン
-原作=オスカー・ワイルド『ウィンダミア卿夫人の扇』


うーん、なるほど。オスカー・ワイルドの原作でしたか。最後まで見て頷いてしまった。
予告編を見た限りでは、タイプの違う女性との恋の駆け引きのような軽いラブロマンス
(?)ものかなぁと思ってた。期待してなかった事もあってか満足感が残る。感動巨編
でもなく、CGを駆使したスリルとサスペンスの超大作なんかではない。それでも原作の
確かさ、もの語りの巧みさ、台詞やエピソードの積み重ね、そういった仕掛けで豊かな
作品は生まれ得るのだと実感する。幸せな気分が心に残る作品。色々な形の、やっぱり
すべて愛。

スカーレット・ヨハンソンの初な感じは魅力的。『真珠の耳飾りの少女』も良かった。
どこかイングリッド・バーグマンを思わせる。そしてヘレン・ハント。巧い!微妙な感
情が細かに表現されている。老紳士達の会話も軽妙で楽しい。クリティカルなイギリス
人のワイルドらしい。が、設定はアメリカ人か?(笑)

公式サイト=http://www.gaga.ne.jp/goodwoman/index2.html
『ブエノスアイレスの夜』★★★
アット・エンタテインメント
ブエノスアイレスの夜

(2001年・アルゼンチン、スペイン)

-監督=フィト・パエス
-出演=セシリア・ロス、ガエル・ガルシア・ベルナル

ガエル・ガルシア・ベルナル関連でもう一作品♪
過去に謎を秘めた女性と、若い男娼の悲恋が描かれる。ギリシャ悲劇「オイディプス」
が基にある。

何らかの事情を隠したままアルゼンチンに帰郷した女性と、お金のため、男娼をする
かなり歳の離れた男性との恋愛ものという事で、官能的なセクシャルな部分が強調さ
れがち。予告を見た時も軽い悲恋物語かと思った。

が、実際はもっと暗く重い。彼女の過去には、故郷アルゼンチンの軍事統制下におけ
る非情な体験が隠されていた。戦時下で最も被害を受けるのは、争いに直接関係ない
弱者である。暗く抑えられた映像と、重く響くピアノの音と共に、その事実は切り裂
かれるように辛い。しかも彼女の傷は過去に留まらず、現在にまで及ぶ。二重の悲劇
である。

その事実を知った時の痛みはどんなだったろう。想像も及ばない。軍事統制という過
去は終わっても、傷を受けた事実は生き続け今に続いている。その痛みは見ていて辛
すぎる。それでも足を踏み出す彼女、そして彼女を取り巻く人達。
主役二人の堅実な演技によって、深い作品になっている。

『アモーレス・ペロス』★★★★
(2004年・メキシコ)
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
アモーレス・ペロス ― スペシャル・コレクターズ・エディション

-監督=アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
-出演=ガエル・ガルシア・ベルナル、エミリオ・エチュバリア


犬つながりで一作♪

『アモレース・ペロス』は直訳すると「犬のような愛」 。階級も生活も全く違う
が、犬を連れた人達の3つの物語がそれぞれ語られ、僅かに触れ合うかと思うと
また離れていく。

久々に衝撃を受けた作品だった。再び見直したがその衝撃は変わらない。”今”
メキシコを扱った作品に触れたのは初めてだった。
冒頭からの疾走感、めまぐるしい映像、流血、発砲、メキシコの持つ熱と激しさ。
現在のメキシコを舞台に描いて鮮やかだ。

メキシコという国は、西部劇や、サボテンにロバのいる砂漠の景色、或いは麻薬の
はびこった危険な国といったイメージで描かれがちだが、一部かなり裕福な階級も
あり、西欧との繋がりの強い近代的な社会でもある。

”今”を伝えられる監督が現れた事や、メキシコ出身の俳優、ガエル・ガルシア・
ベルナルの活躍は、メキシコ映画界にとって素晴らしい事だと思う。ガエル・ガル
シア・ベルナルは俳優としてだけでなく、ハリウッドに対する批判的姿勢や、メキ
シコに劇場を建てたいという夢を持っているという点でもすごく魅力のある人物♪
『モーターサイクル・ダイアリーズ』チェ・ゲバラ役でも人気を得た。これから
の活動に注目の一押しです☆

『いぬ』★★★
(1963年・フランス)
アイ・ヴィー・シー
いぬ
-監督=ジャン・ピエール・メルヴィル
-出演=ジャン・ポール・ベルモンド 、セルジュ・レジアニ


警察に仲間の情報を得る密告者を「いぬ」と言う。強盗の計画を警察に告げたのは誰なのか。
復讐を胸に出所した男は…。

古き良きフランス映画。モノクロの映像にタイトなつくり。話の筋や演出に無駄がなく、男
臭さを感じる。無駄はないのだけど、主人公が出所後、部屋の鏡の前で帽子を直すところな
どは細かい。隠語である「いぬ」の本来の意味は「帽子」だが、そのせいか帽子の使われ方
も気になる。ひと癖ありそうなジャン・ポール・ベルモンドがカッコいい♪裏の世界に生き
る彼らに希望はあるのか。男同士の友情を描く。女はダメですか…?(笑)


『エレニの旅』★★★★★
(2004年・ギリシャ)
紀伊國屋書店
エレニの旅

-監督=テオ・アンゲロプロス


ギリシャの映画。愛するテオ・アンゲロプロス監督の最新作。
ロシア革命から逃れ、母国ギリシャに逆難民として帰国したエレニという女性の
生涯を描いている。

約3時間という大作にも拘わらず、飽きる事なく見られるのは何よりもその映像
の美しさに魅せられてしまうから。展開される映像はどれも一枚の絵画の様に
静謐でひたすら美しい。CG無しでこれ程作り上げられる事に脱帽!
物語は、革命と戦争の中で翻弄される女性の生涯が身を切られるように辛い。
辛いのだけど、力入れて頑張ってます!って感じでも、耐えてます!って感じ
でもなく、自然に描かれているのが却って胸を打つ。
更にその悲惨さを戦いのシーンも流血もほとんどなく語れる所も素晴らしい。
一女性を取り巻くギリシャ、ロシア、アメリカという国の背景も描かれ、
スケールも大きい。人は自然の前に、国の前にこんなにも無力で、それでも
一人一人それぞれの一生を生きてるんだなぁ。
監督の亡くなった母親の生涯というにのも驚き。

全てを抱え込んで流される女性の最後の涙は、とにかくとにかく切なくて胸が
痛む。
映像を愉しみつつ、詩を読むようにぜひぜひ見てほしいデス!


公式サイト=http://www.bowjapan.com/eleni/index.php