↑上記の続きです。
もうちょい詳しく調べてみました。
明治最強の?男系男子論者w、井上毅の「謹具意見」です。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1877174
コマ番号136
井上毅の謹具意見ざざっと読んだけど、やっぱり今時の男系論者の血統観念としての男系論(Y染色体理論、畑と種理論)とは違うんですよ。
井上が言ってるのは、
「妻は夫に従うものってのが常識だろ!
女帝に夫ができたら天皇より上の存在ができちゃうじゃん!」
という明治の男尊女卑観バリバリのアホな意見と
「女帝の夫が源のなんとかだったら、天皇家の姓が源になっちゃうじゃん!」
という天皇家に姓がないことを知らないらしいアホな意見。
しかも源のなんとかなら「男系で辿ると神武天皇の男系男子」のはずなのにそんなことは一言も言ってない。
ちなみに明治の女系容認派の意見としては
「古来、女帝を擁していたのが伝統だ。女帝禁止は伝統破壊だ」
(我が国古来女帝を立つるの慣習あり、今に及んで男統に限るとするは是れ慣習を破壊するなり)
という保守(国書に通ずる者)からの意見と
「昨今は男女平等になってきてるのに、イマドキの観点と違う。文明に逆行する」
(男女の権利漸く将に平を得んとす/十九世紀の気運に反するものなり/文明の却歩)
というリベラル(洋書を解する者)からの意見、双方が見受けられる。
どう考えてもこっちの方が知的でまともですやん・・
どうやら皇位継承を複雑化させてしまった男系男子縛りは、井上というお武家脳が伝統破壊&非リベラルな大間違いをやらかしちゃっただけのようですねえ・・・。
その井上も血統観念としての男系論は唱えていない。
これは大事なポイントです。
政治的な理由ならば、象徴天皇の現在、考慮する必要はない。
もう武家社会は終わったんですよおじいちゃん、って話です。
現代の男系論の主軸は血統観念としての男系論であり、
「女系は皇統外」
「男系のみが皇統で、女系天皇は血統的に無価値な偽天皇」
という明治にすらなかった、井上すら言ってなかった考え方。
この血統観念としての男系論なんてまったく伝統ではありません。
女系忌避の理由が政治的理由だったならばちゃんとその論点で議論すべきなのです。
「女系は皇統外」
「男系のみが皇統で、女系天皇は血統的に無価値な偽天皇」
なんて言う血統観念はそれこそ宗教と同じで、最初っから議論を拒否してる暴論な訳ですが、
なんとそんな観念は古事記にも日本書紀にもなく、
さらには明治にすらなかった平成生まれの新解釈です。
例えば「女帝は独身」だった理由についても。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1877174
コマ番号139
井上は
「夫は妻より上の存在、女帝に夫ができたら天皇より上の存在ができてしまう!
それに夫が女帝を裏から操ったら大変だ!」の後に
「古来、我が国の女帝は独身を貫いたことで威徳を損することがなかった」
と言ってます。
今時の男系論者はこの女帝の独身を「女系は皇統外だから独身だった」と血統観念で語りますが、
井上ですら女帝独身の理由を
「夫と言う妻より上のものを持つことで天皇としての威徳を損することがないように」
と言う政治的配慮としてしか捉えてないんですよ。
さらにこれ
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1877174
コマ番号140 一行目
「女系容認派は血統を重んじてるだけだ!」
ですってよw
「(男系男子)反対論者の口実とするところは女帝を立つるは血統を重んずるなりと云ふに過ぎず」
「でも君主は男がふさわしいだろ常識的に考えて!男を尊び女を卑しむのは日本人の脳髄を支配してるしな!」と言う論調なんです。
「男を尊び女を卑しむの慣習、人民の脳髄を支配する我が国に至ては、女帝を立て皇婿を置くの不可なるは多弁を費すを要背ざるべし」(コマ番号139)
ほら、「血統観念として女系はだめだ」、なんて意見は明治にすらない。
明治の男系論は、むしろ、
血統観念としては傍系男子よりは直系女子だよね、
でも政治的配慮として女子はだめなんだ論
なんです!
なーにが
「女系は皇統外、血統としてアウト」だ 。
現代の男系論者は本当に大嘘つきだ!!
明治は女系容認派こそが「血統重視論者」であり、
男系男子派は「血統も大事だけどでも、天皇は男じゃないと色々まずいだろ!」だったのです!
ようするにお武家脳だったのだと思います、明治政府(の男系推しの人たち)は。
徳川将軍に女がいないように、殿様が女なんてありえない、殿様でありえないんだから天皇もありえない、的な感覚が見え隠れしている。
天皇を一番偉い殿様的にとらえちゃってる、そういう価値観のお話。
よくある言説「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重み」
まず皇統をこういう風に「男系継承」と見る見方自体が近代の捏造新解釈なんです。
明治の男系論者が女系容認派に
「男系男子縛りは伝統破壊」と言われてなんとか論破できないかと頭をひねって
ようやく思いついた概念が「過去の女性天皇は女性だけど男系だ」解釈でしょう。
それまで日本人は皇統を男系継承だなんて思って来ませんでした。
だから明治にも女系容認派はいっぱいいたんです。
「天皇は男の方が都合がいいからなるべく男で」という考え方はあったでしょうから、ほとんどの天皇が男ではありますが、
推古天皇や持統天皇といった過去の女帝の知名度も高く、
天皇の娘ではない神功皇后すら天皇扱いされている文献もあり(風土記)、
「男女両方が天皇になりうる、皇統は将軍家とは違う」
ってのはちゃんと認識されていました。
日本人の感覚として、女帝への忌避感なんてなかっし、
「過去の女帝は父親が天皇だから男系天皇であり、皇統は男系継承である」
なんてアクロバティックな男系認識なんて持っていなかったでしょう。
以前も別の記事で書きましたが、中国皇帝やヨーロッパサリカ法典など、諸外国の男系継承は全て「男系男子継承」であり、
ヨーロッパで女王のいる国は全て女系容認です。
これが「自然な感覚」であり、「父親が天皇だから名誉男性扱い?して男系継承設定」なんて奇怪なことを認識していたわけもないのですよ。
「じゃあなぜ女帝は独身だったのだ」?
それは明治最強の男系男子論者、井上氏がこう回答してくれています。
「夫と言う妻より上のものを持つことで天皇としての威徳を損することがないように」
だそうです。