ちょっと文部科学省での詳細なページが見当たらなかったのであくまでも私の私見になるのですが、「微細運動障害」という障害があり、わりと高確率で遭遇することがあります。

 

 「発達性協調運動障害」の中に「微細運動障害」があり、かの有名なハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフも自身で認めているそうです。(もう一つに反対の性質をもつ粗大運動障害というものがありますが、こちらは運動する上で身体の使い方がぎこちないというもので、映画の中であれだけのアクションをしてきたのですからハリーは「微細運動障害」なのかなと思います。)

 

 「微細運動障害」とは、要するに細かな指先の操作が苦手というものです。

 

 例えば、字を書くのが苦手。これが主たる症状として出ます。

 

 私は自分自身が左利きで字が汚くてコンプレックスなので、自分が育てる子供たちには「きれいな字」に育てたいという思いがあります。

 

 「微細運動障害」とはっきり判断できる立場ではありませんが、過去に何例か相当するのではという子供たちと出会ってきました。

 

 これは身体の発達の遅れで細い鉛筆が持つことが苦手、という理由でなっている場合もあるので、「微細運動障害」とは言い切れない場合もあるのですが、とにかく判断基準としては「字が枠線からはみ出している。」です。

 

 このため、私は色々な手を尽くしてそうした子供たちに対応してきました。

 

 どういった対応かというと、

 

①書き取り。

 延々と書き取り。キツいですよね。でも、「字をきれいにしたい」という熱意があった子だったので、私も熱意をもって一緒に頑張ろうと言う気持ちを見せるために、ノートのコピーにあいうえお表を赤ペンで書いて、ひたすらその上から毎日なぞり書きさせました。時には漢字、時にはカタカナと。

 

 その子のがんばりと私の熱意が一致し、その学年が終わるころにはきれいな字になりました。

 

 が、これはあくまでもその子の熱意があったからなので、あまり有効的な手段とは言えません。

 

②「KUMON」が出している「こどもえんぴつ」を使わせる。

 これは「微細運動障害」があるかないかに関わらず、手が小さい子に向いています。通常の鉛筆より太く、濃いです。そして丸っこい三角の形。指先に力を籠めることができない子に向いています。太さがある故に専門の鉛筆削りが必要ですが、私は子供たちや懇談会で保護者の方々に紹介し、自分の教室に常備していました。お試しにと色々な濃さの鉛筆も用意してあります。

 

 通常の文房具売り場でも三角鉛筆は売っていますが、KUMONのものは丸みを帯びているのがポイントですね。低学年のうちは、コレがけっこう効くと思います。

くもんのこどもえんぴつ|KUMON now! KUMONトピックス|公文教育研究会

 

③チェックタイムを入れる。

 これは教員側としての対処法になりますが、学校生活の中のどこかで全員の字をチェックし、評価する時間を設けます。私の場合は連絡帳のチェック。最初の頃は保護者にも伝わりやすいようにあまり省略せずに書かせておいてチェックも簡単に済ませます。徐々に省略した言葉を使い、子供たちから「〇もっていうのは、明日持ってくる持ち物のことだよ。」など、保護者にも伝えられるようになれば(または低学年で難しければ学級通信で省略している言葉の意味を書いておく。)、連絡帳に書く内容を短く済むようにし、丁寧に書かせます。

 

 早く書けた子から持って来させて判子を押しますが、その際に書き漏れの指摘だけではなく「乱れている。」「美しい。」「前より上手くなった。」と一言評価します。子供的にも、この時間はけっこう気合を入れて来ますし、私の評価を聞いて一喜一憂しています。そのため、「次こそは!」という気持ちでやってくる子も多いです。

 

④なぞり書きさせる。

 これは難しい漢字を全体指導する時にもたまに行うのですが、連絡帳を持ってきた時に連絡帳の字が乱れていたら、赤ペンでお手本を横に書き、なぞり書きするように伝えます。

 

 また、児童がかなり間違える字の場合、ノートのコピーに書き順から書き、一ページ分練習させて身に付けさせます。

 

⑤正しい鉛筆の持ち方を掲示+筆箱に貼る。

 

 こういうイラストを用意し、教室に貼る。+筆箱に貼らせる。

 

 筆箱に貼る理由としては、常に目線に入って、持ち方を確認できるからです。

 

 そのため私はポーチ型筆箱を嫌っています。コレができないから。

 

 この話はまた別のところで語りたいと思います。

 

 

 というのが、今のところの私の指導方法です。

 

 これは研修の一環で研究対象にしていたときもあり、年度初めの児童の自分の名前と年度終わりの児童の自分の名前を比較した画像を撮って比較してみたこともありました。成果は上々。まだちょっと乱れがあるものの、しっかりとした筆圧で書かれていました。

 

 保護者の方々にできることと言えば、「なぞり書き練習帳」で練習させることですね。また、字形の乱れは鉛筆の持ち方に乱れがある場合があるため、鉛筆を持つための補助道具(色々な文房具屋さんで売っている。)を使わせることも良いと思います。

 

 KUMONさんでは他にも色々な学習用具が出ているので、一見の価値ありです。さすがに高額なこれを用意すると、学級としてやり過ぎだよな・・・と思うので(思いつつこっそり一部使っているものもあったり。)あまり揃えられませんが、ご家庭で何とかならないかな~と思っていることがあれば、もしかすると「コレよコレ!」というものに出会えるかもしれません。

 

 輪ゴムを使って鉛筆の持ち方を矯正することもできます。1年生を受け持った時は、全員に一度体験させたこともあり、「やりやすい、きれいにしたいと思えばこれを使うと良いよ。」と自由に使わせていました。お金もほぼかからないし、やってみて損はないですよね。「鉛筆 輪ゴム」で検索すれば色々なやり方が出てきますので、気になったらトライさせてみると良いでしょう。

 

 ただし、問題はディスレクシア。LD(学習障害)の一種で、字を見る時の視界が普通とは異なる発達障害の場合はどれもあまり効果的ではないかもしれません。

 

 一応、私が担任したLD疑惑(いつもテストで0点やそれ近くを取る子)の児童たちは、この手法で字形が整っていったので、ディスレクシアでも効果的なのかな? と思います。

 

 とりあえず、今のところの「微細運動障害」の私の知見が以上です。「粗大運動障害」らしき児童もちらほら見てきましたが、はっきりと発現している児童を担当したことがなく、知識もないので語ることはありません。とりあえずアスリートになりたいわけではなければ大丈夫なのではないでしょうか。くらいしか言えないですね。

 

 自分の字形にコンプレックスがある。それは左利きだから。でも右利きにしてもらえなかった不遇な幼年期。左利きだと本当に字を書く上で不利でしかないので、お子さんが産まれて何か道具を使いだす時点で右に使うように躾けることをおすすめします。

 

 なぜそこまで言うのかはこちらをご覧ください。(左利きの苦悩~ユニバーサルデザインを求む~ | 発達闘病先生 (ameblo.jp)

 

 それでは、今日はこれまで。